「バイオ炭」はカーボンニュートラルの切り札か?~そのポテンシャルとビジネス化成功の条件~

2023/08/07 矢野 雅人
サステナビリティ
気候変動
脱炭素
カーボンニュートラル

1.   はじめに

近年、「バイオ炭」への関心が高まっている。バイオ炭とは、バイオマス、すなわち生物由来の資源を嫌気的条件(酸素濃度が低い環境)の下で加熱することによって生成される炭化物である。木炭はその代表例であるが、その他にももみ殻や稲わら、家畜の糞尿、再生紙の製造過程で排出されるペーパースラッジなど、さまざまな資源の炭化物が含まれる。

このバイオ炭が気候変動対策の文脈で注目を集めるようになったのは2014年のことである。この年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が「第5次評価報告書」の中で、バイオ炭を土壌に施用(投入)することで温室効果ガスの削減効果が得られると指摘。世界全体の削減ポテンシャルを年間66億トン(CO2換算)とする試算結果を紹介した。これはコストを度外視して目一杯取り組みを実施した場合の最大削減量であり、必ずしも現実的な値ではないが、カーボンニュートラルを目指す世界には魅力に映り、以降有望な気候変動対策の1つとみなされるようになった。

その後IPCCは、2022年4月に公表した「第6次評価報告書」において、コストを考慮した場合の削減ポテンシャルが年間11億トン(CO2換算)に達するとした。現実に即した分だけ「第5次評価報告書」より値は減ったものの、日本の1年間の温室効果ガス排出量を帳消しにできるほどの削減ポテンシャルが示されたことで、バイオ炭の魅力が改めて確認される格好となった。

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