2025/01/27
「ダイバーシティ&インクルージョン」~企業が変わり、社会が変わる~
昨今、多くの企業がダイバーシティ&インクルージョン(以下、「D&I」)を推進しています。D&Iとは、多様な人材を受け入れ、社員の多様性を経営に生かしていくこと。 社会が変化していく中で、企業が持続的に成長していくための重要なテーマです。今回は、当社の「女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室」に所属する二人に同室の活動やその活動に対する想いを聞きました。
自身の感じた違和感の先に一人ひとりが自分らしく働ける組織を求めて
Q.二人がダイバーシティ&インクルージョンというテーマに関心を持つようになったきっかけは、どのようなことだったのでしょうか?
矢島 子どもの頃、周りから提示される“当たり前”や“普通”に対して、ある種の生きづらさを感じていたんです。大人になるにつれて、日本社会において、多様なライフスタイルや働き方を選択できないことが多くの人の生きづらさにつながっていると気付き、ワーク・ライフ・バランスやD&I推進を通じて、社会や企業組織が変わっていく後押しができればと考えるようになりました。
尾島 私がこの領域に携わるようになったのは、20代から30代に差し掛かる頃に経験したことがきっかけです。当時、女性は妊娠・出産を機に勤めていた会社を退職することがまだまだ多く、周りの友人もそのような状況でした。「出産後も働き続けられると思わなかった」「復職はしたけれど育児と両立しながらやりがいのある仕事に携わることが難しい」。そうした社会に違和感を覚え、ライフステージに合わせてさまざまな働き方を選択できる社会を作っていきたいと思い、D&Iに関心を持つようになりました。
Q.D&Iについて、現在企業で課題とされていることは何ですか?
矢島 ここ数年で日本企業のD&Iや、柔軟な働き方に関する意識は大きく変わり、テーマも広がってきました。その中でも、依然として「女性活躍推進」は重要なテーマとしてあると思っています。女性の就業継続が一般化された現在において、そのキャリア形成を支援していくことの必要性が高まっています。
尾島 企業の現場からは「女性は管理職になりたがらない」という声も聞こえてきます。しかし、調査をしてみると男女で仕事経験に差がある、子育てなどで時間制約ができると上司が育成対象とみなさなくなる、といったことがわかっています。職場の「アンコンシャス・バイアス」を取り除き、働きやすさを高めることができれば、女性も中長期のキャリア展望を持てるようになると考えています。そのためには、働き方改革を通じて柔軟な働き方の選択肢を増やし、時間当たりの成果に応じた公平な評価が行われることが重要です。
矢島:2016年に女性活躍推進法が施行された当初は、女性の積極登用や研修に注力する企業が多く、その後、管理職のマネジメントを変革する取り組みが増えてきました。近年は、役員を対象とした研修や、あらためてD&I推進方針やロードマップをしっかりと策定したいといった依頼が増えています。
尾島:当社に依頼されるダイバーシティのテーマも、男性も含めた子育てのための柔軟な働き方、性自認や性的指向の多様性を踏まえた社会・組織のあり方、治療や介護と仕事の両立などに広がりを見せています。
グループ長 主任研究員 尾島
組織横断型の柔軟なチーム編成の強みを生かして新しいテーマにチャレンジを続ける
Q.「女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室」はどのような経緯で発足されたのでしょうか?
矢島 「女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室」が立ち上がったのは2013年のことです。もともと当社では、プロジェクトの立ち上げにおいて、組織の枠を超えて、最適なメンバーを募る“コワーク”によるチーム編成が柔軟にできる仕組み、風土があります。室の立ち上げ前には、このコワークの活用により、研究員とコンサルタントが協働して厚生労働省の委託事業などに取り組んでいました。しかし、いよいよ企業向けのコンサルティングに取り組もうとした際に、コワークによる対応だけではなく、対外的な窓口を明確にした組織を持つ必要性を感じ、これも当社の仕組みである本部横断的な「事業開拓組織」という手法を使って組織を立ち上げました。
尾島 官公庁の受託事業や民間企業コンサルティングなど顧客から依頼のあるプロジェクトだけでなく、独自調査や社外との共同研究など、D&Iに関するさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。約20人が在籍しており、それぞれが専門領域を持ちつつ、D&Iというテーマと絡めて自律的にキャリアを追求しています。そうしたチームで日々議論を重ねることで、多様な視点で企業や社会が抱える課題解決の糸口を探しています。
Q.「女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室」の今後のビジョンを教えてください。
尾島 社会を変えていくためには、私たちが持つさまざまなノウハウを発信していくことが大切だと思っています。官公庁・民間企業の案件を通じて政策・施策立案に参画していくことはもちろんのこと、当社独自の研究成果や提言を発信していくことも積極的に行っています。また、大学生や高校生向けに企業の取り組みを伝える授業なども行っていきたいと思っています。
矢島 その目的としては、学生だけでなく親世代に企業の変化を伝えていきたいという意図があります。現在の高校生や大学生の親世代は、まだ女性は妊娠・出産時にいったん離職することが必然だと認識している人が多い世代です。現在の企業のD&Iの推進状況を知っていただくことで、親子共にライフプランを見直すきっかけにしてほしいと考えています。
企業と同時に社会全体のD&Iを推進することで、未来の社会がより選択肢が多くてより働きやすい、生きづらさを感じる人の少ない社会になることに貢献していきたいです。
女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室の紹介動画
政策研究事業本部
執行役員 主席研究員
矢島 洋子(やじま ようこ)
profile慶応義塾大学法学部卒業後、1989年に入社。2004年4月から3年間、内閣府男女共同参画局男女共同参画分析官を務める。少子高齢化対策、男女共同参画の視点から、ワーク・ライフ・バランスやダイバーシティマネジメント関連の調査研究・コンサルティングを行っている。
近著は『シリーズダイバーシティ経営 仕事と子育ての両立』。2013年より「女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室」を立ち上げ、多くの社員と協働している。
当社の女性活躍を含むダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みを一層加速するためのCDIOにも2025年1月1日から就任。
「チーフ・ダイバーシティ&インクルージョン・オフィサー(CDIO)」の設置について
政策研究事業本部
社会政策部 ダイバーシティ・ライフデザイングループ
グループ長 主任研究員
尾島 有美(おじま ゆみ)
profile東京大学教養学部卒業後、2003年に入社。2012年より内閣府男女共同参画局調査分析専門官として従事し、2014年より当社に復職。女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室のリーダーとして、ダイバーシティ推進、女性活躍などを専門領域として活躍している。
2019年より亜細亜大学非常勤講師として、学生へのライフプランニング教育にも携わっている。
関連サービス
ダイバーシティ・WLB(ワーク・ライフ・バランス)・働き方改革
※所属・肩書は記事公開時点のものです
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