変化の時代に“組織を強くするカイゼン”の進め方②~カイゼンでつくる組織風土~

2021/07/09 浅井 太郎
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企業経営では、将来も存続できるよう組織を強くし変革に挑んでいく長期的視点が欠かせません。組織を強くする要件のひとつに、働く人々の“働きがい”が挙げられます。多くの従業員が「仕事を通じて自らの思いや考えを実現することができ、幸福感を得られている」と感じていれば、大きな力が生まれます。働く人々の感じ方には、組織風土が大きく影響します。組織風土とは、仕事の中で当たり前になっている価値観やルールなどが思考や行動パターンとして定着したものです。そのような中、カイゼンの取り組みを通じて自分達にとっての当たり前を見直し、より良い組織風土を実現することが長期的な発展につながる強い組織づくりとなります。

本コラムでは、より良い組織風土をつくるカイゼンの取り組みについてご説明します。

より良い組織風土に繋がるカイゼンとは

カイゼンは「よく見て→知って→考えて→実行すること」を繰り返し行うため、従業員各々の考えや思いを語る機会が多く生まれます。忙しく仕事を行う日常業務から一旦距離をおき、課題を前にした時に語られる言葉や行動は、普段とは違ったものになり、そうした環境が新しい気づきを生むこともあります。
言葉や行動は繰り返されることで習慣になり、それがお互いに影響し周りに広がっていくことで組織風土に変化をもたらしますそのため、カイゼンの取り組みを通じて、仕事の中で定着している思考や行動パターンを見直すには、一人ひとりに気づきを促す言葉がけが大切になります。具体的には、出来事を客観的に見るように働きかける言葉がけ、可能性に焦点をあてる言葉がけが必要です。特にリーダーの立場となる方は、職場において以下の言葉がけを意識してみるとよいでしょう。

表1 気づきを促す言葉がけの例

出来事を客観的に見る言葉がけ 可能性に焦点をあてる言葉がけ
異なる側面がないか
・「こうに決まってます」
→「○○からは、どう見える?」
これまでの熱中体験を思い出す
→「いままでで最大に努力したこと、自分が感動したことは何がある?」
多くのアイデアを出す
・「これしかないと思います」
→「見逃していることはない?」
自分達の強みを活かす
→「自分達の力が最大に発揮できるのは、どんなこと?」
前提や条件を確認する
・「いつもこうなんです」
→「どんな時に、そうなるの?」
よい例外を見つける
→「小さなことでも、上手く行っていることは何かない?」
因果を明らかにする
・「うまくできました」
→「何がよかったの?」
本当に望んでいることを確認する
→「どうなったら、自分達自身が喜ぶことができるの?」
当たり前を疑う
・「昔からそうなっています」
→「本当のところはどうなの?」
社会や顧客に与える影響を考える
→「これが実現したら、どんなことが起こる?」

カイゼンからうまれる組織風土とは

では、上記のカイゼンを通じてどのような組織風土を実現できるのでしょうか。変化の激しい今般、組織のあり方の見直しや、働く人々の価値観の変化に関心が高まっています。心理的安全性(自分らしさを不安なく発揮できる状態)やラーニングカルチャー(仕事の中でお互いに影響し合い一人ひとりが自律的に学ぶ文化)といったキーワードが、人事部門や管理職の方々の間で語られることも多くなっています。これらは、カイゼンを通じて実現できることです。具体的には、以下の4つが挙げられます。

表2 カイゼンの取り組みを通じて実現可能な4つの組織風土

組織風土 実現のポイント
チャレンジする風土 本人が自身の成長を感じられるよう、仕事の結果だけでなく努力や挑戦そのものを評価して一人ひとりに伝えること
一人ひとりが責任感を持つ風土 どこまで仕事を任せるか一人ひとりの能力や状況をふまえて判断し、本人に期待を伝えて積極的な行動を促すこと
協働する風土 お互いにサポートすることが歓迎されていると感じられるよう、縁の下の力持ちに感謝し評価する仕組みを持つこと
仕事から学ぶ風土 一連の出来事について都度振り返る機会を持ち、学びを深める問いかけを行ってお互いに聞き合うこと

まとめ

カイゼンを推進するリーダーが、カイゼンを単に目先の結果を求めるものではなく組織の変化や人の成長を促すものであることを理解し、進める中で、考え方や語られる言葉を大切にすれば、それが変化の時代に“組織を強くするカイゼン”となるのです。

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