非上場企業・中小企業に広がるサステナビリティ経営

2021/07/09 弓場 雄一
Quick経営トレンド
サステナビリティ
中堅・中小企業経営

2022年4月に東京証券取引所が「一部、二部、マザーズ、JASDAQ」の4市場から、「プライム・スタンダード・グロース」の3市場に再編され、これらの市場に上場している企業には、2021年6月に改訂されたコーポレート・ガバナンス・コードへの対応が求められています。
今回のコーポレート・ガバナンス・コードの改訂においては、サステナビリティ方針の策定と開示、また気候変動に関する対応の開示が新たに盛り込まれました。
現在、上場企業はこれらの対応に追われています。

そしてその余波は、早くも非上場企業・中小企業に対しても現れ始めています。本コラムでは、これらに先手を打つ対応を解説していきます。

対応1: 顧客のESG調達に対応する

ESG調達とは、調達先の環境(E)、社会(S)、企業統制(G)等の非財務面への対応状況によって、調達先を評価・選定しようとする取り組みを指します。
一つ目のパターンは、このESG調達を志向する大手企業から環境・社会などへの対応が求められ、それらの対応の実現度を問われるケースです。これら顧客企業の中には各社で作成した基準ではなく、国際的にサプライチェーン管理サービス(スコアリングサービス)を提供しているSedexやEcoVadisなど、外部の基準の利用を要請するところもあります。

また、顧客企業の意図は「把握」ではなく「レベルアップ」にあります。そのため、ただ回答するだけではなく、質問や基準の真意を理解し、自社の取り組みを深めることを視野に入れることが肝要です。

基準例 概要
Sedex ビジネス倫理や労働慣行を中心に、安全や環境にも言及した項目を提供。顧客要請に応じてセルフチェック結果を登録、その結果を顧客が確認する等。世界で約6万社が利用
EcoVadis 幅広いサステナビリティ(環境・社会等)に関する質問票によって対応度を測るサービスを提供。パフォーマンスに応じてレベルを評価。世界で約7万5千社が利用

対応2:事業指針作りのためにSDGs等を活用する

二つ目のパターンは、受け身ではなく、自社の事業指針を見つめ直す材料として国連SDGsをはじめとするサステナビリティ要素を利用するケースです。

ニーズがなければビジネスは成り立ちません。国連SDGsは社会に普遍する課題(社会ニーズ)を端的に示しているため、その社会ニーズを満たす事業(ビジネス・商売)を検討するきっかけとして有効です。

ある建設関連企業ではSDGsに触れることで「都市整備・社会インフラの整備」という使命に立ち返ることができ、新たな事業検討や技術開発に乗り出すきっかけになりました。

また、SDGsを活用することで、より長期的視点で経営課題を検討できるようになります。CO2排出量の多いセメント業界に属するある企業は、2050年カーボンニュートラルへの対応を真剣に議論しはじめ、業態転換も視野に入れた社内プロジェクトを発足させています。

国連SDGsに取り組む企業が見せる3つの変化
① 「自社起点」から「社会起点」に
② 「短期・中期視点」から「長期・超長期視点」に
③ 「リスク回避」から「事業機会の創出」に

さいごに

上述したように、大企業だけでなく非上場企業や中堅・中小企業においてもサステナビリティ経営は大事な要素となりつつあります。いち早く取り組みを開始し、新たな気づきを得て、企業経営の力に変えていくことが求められています。

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