新陳代謝マネジメントを実現するコーポレート機能とは

2021/09/13 柏原 雄一郎
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競争優位の有効期限は驚くほど短くなり、事業の寿命もますます短くなっています。事業の寿命を超えて企業を存続させていくためには、意図的に新陳代謝を起こす成長戦略と変化志向型の組織デザインが必要です。そのためには、持株会社やグループ本社など全社を俯瞰しているコーポレート部門が、変革への触媒となって、その実現をけん引していくことが重要です。

意図的な新陳代謝と変化志向型の組織デザイン

企業が持続的に成長するためには、環境変化に迅速に適応することが不可欠です。そのためには、戦略と組織を絶えず見直すことにより、変化し続けなくてはなりません。具体的には、次世代への成長の種蒔きとして、新規事業開発や多角化を図る必要があり、その実現手段としてM&Aは重要な選択肢となっています。

一方で、個人は変化を嫌い、安定を志向する傾向があります。そのため、変化を促す仕組みが無い場合、組織は硬直化し、制度疲労や老化現象を引き起こします。これを回避するためには、自律的な変化を促すインセンティブを意図的に組織デザイン(組織文化、組織構造、制度・仕組み・施策を含む)に組み込むことが必要です。そうすることで、挑戦する風土を醸成し、大勝負ではなくとも小さなギャンブルを継続することによって、人材も事業も育っていきます。本業が順調な時ほど、未来への種蒔きが重要であり、意図的に組織に刺激を与え、新陳代謝していくマネジメントが求められます。

コーポレート部門が果たすべき機能

事業部門は眼前の日常業務に忙殺されがちなため、上で述べたような新陳代謝マネジメントに取り組むのは難しいのが実情ではないでしょうか。時には痛みを伴う方向性を示し、変革を起こしていくことになるため、全社的/長期的な視点に立って判断する機能が必要となります。その機能を果たすのがコーポレート部門となります。

例えば、グループ戦略は、個別事業の単純合算以上に、グループ全体としての企業価値を高めるものです。しかしながら、個別事業の専門化・細分化が進むと、その反作用で部分最適が進んでしまい、結果、グループ全体で本来生み出すべきシナジーが発揮できないという事態が起こり得ます。また、変化忌避、現状維持・安定志向が強い組織の場合、硬直化により環境適応が遅れる傾向にあります。

だからこそ、コーポレート部門が、組織横断的な視点から戦略的なグループシナジーや部門間の相互作用の重要性を認識し、創発を促すマネジメントを行うことが必要となります。また、組織に柔軟性を持たせるための組織再編・組織変更のプロセスを通じて、コーポレート部門が新たな価値を生み出せるようにしておくことも重要です。

変化の激しい時代であるからこそ、コーポレート部門が当事者意識を持って会社の潜在的な価値を引き出す触媒の役割を果たせるよう、その機能を強化していくことがますます求められています。

コーポレート部門と事業部門の役割・担当領域(境界線)

図 コーポレート部門と事業部門の役割・担当領域(境界線)

(出所)当社作成

新陳代謝マネジメントにおけるコーポレート部門の役割

■企業存続のための事業の新陳代謝

■新規分野を含むインキュベーション&イノベーション

■組織横断によるグループシナジーの創出

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