SDGs/ESGを背景に、リスクマネジメントの高度化に求められる3つの視点
国際連合により採択されたSDGs(持続可能な開発目標)や、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)といった非財務情報を重視するESG投資が世界的潮流となる中、企業に対する社会課題への取り組み要求はますます高まっています。こうした背景を受けて、企業は社会課題への取り組みを事業と別個で行うのではなく、経営戦略の中に位置づけ、その解決にも寄与する事業を展開することが求められています。 このように、経営戦略と社会課題解決が一体化していくことに伴い、経営戦略と両輪として機能すべきリスクマネジメントの高度化が不可欠となっています。ここでは、その高度化に向けて検討すべき3つの視点について解説します。
1 適切なリスクテイクと事業ポートフォリオ管理
気候変動をはじめとした外部環境の変化が、ビジネスに大きく影響し得る状況下で、企業はリスクとリターンの両面を踏まえ、適切にリスクテイクすることをますます求められるようになっています。これを実現するには、事業ごとに収益性指標とリスク指標の両方を設定し、多面的に事業を把握するための事業ポートフォリオを作成、管理することが必要です。社会課題解決に向けた事業展開を進めるにあたり、こうした態勢整備は効果的な事業運営を可能とするだけでなく、株主の事業理解促進を通じて、安定的な事業運営にもつながると考えられます。
2 エマージングリスクの管理
エマージングリスクとは、「これまで顕在化しておらず、予想の難しいリスク」を指します。近年、感染症や異常気象等、SDGs/ESGと関連の深い事象がエマージングリスクとして取り上げられることが多く、これらの正確な把握および管理は、安定的な事業継続において不可欠と言えます。その捕捉には、自社内や業界内のリスクを確認するだけではなく、世界経済フォーラムによる「グローバルリスク報告書」1等、国際機関が発行するレポートを参照することにより、大局的な視点を持つことが重要となります。
3 レジリエンスの強化
レジリエンスとは、「危機に直面した際に、事業を止めることなく早期に復旧もしくは継続する力」を指します。昨今のパンデミックの例からも分かる通り、社会の不確実性が高まっていることを踏まえると、平時からレジリエンス強化をしておくことはますます重要になっていると言えます。その強化にあたっては、自社における重要業務・重要資源の特定とBCP(事業継続計画)の策定および見直しが考えられます。
さいごに
ここでは、リスクマネジメント高度化に向けた3つの視点を解説しましたが、実際に高度化を進めるうえでは、他にもさまざまな検討事項が発生します。三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、各社事情も踏まえて、多様な支援を行っていますので、ご検討の際は是非ご相談ください。
※本稿のテーマについて、より詳細に論じているコンサルティングレポート「SDGs/ESG時代のリスクマネジメント リスクマネジメントの進化に向けた展望」もご参照ください。
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