DXに取り組むための構想策定とシステム調達

2021/09/07 新井 涼介
Quick経営トレンド
デジタルイノベーション
デジタルトランスフォーメーション

2020年に独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施したアンケート1によると、9割以上の企業がDXに未着手か散発的な実施に留まっています。この結果を受け、経済産業省は「DXレポート2中間取りまとめ」2(2020年12月)において、「我が国企業全体におけるDXへの取組は全く不十分なレベルにあると認識せざるを得ない」との認識を示しました。

そこで、本コラムでは自社のDXが不十分だと感じている企業に向けて、DXに取り組むための構想策定とシステム調達の要点を解説します。

継続的な変化を見据えた構想を描く

DXにおける構想策定では、将来自社のビジネスがどうあるべきかを重視し、外部環境の変化に迅速に対応する柔軟性や、データの蓄積・分析・利活用によるビジネスモデルの変革を伴うものとすることが重要です。これまでのように、現行業務に合わなくなったシステムのみを刷新する、システム導入時にカスタマイズを厚くし、その後手を加えない、といったことではDXの構想策定は成り立ちません。むしろ、システムを柔軟に拡張・改修する、またはアプリを必要に応じて付け替えるなど変化を前提に考える必要があります。特に自社の競争領域においては、柔軟性を高め、データの利活用を促進する手段としてシステムを内製化することも検討すべきでしょう。

また、全社横断的にデータを集約するデータプラットフォームを構想する場合もあります。業務やシステムが旧態依然としている場合や頻繁に変更が求められる場合でも、データプラットフォームを介してデータを利活用することで、個々の業務やシステムの影響を受けにくくなります。

システム調達ではDXを推進するパートナーを選定する

DXにおけるシステム調達では、競争領域の内製化を目指していくことも踏まえながら、DXを一緒に推進するパートナーとしてITベンダーを選定します。必ずしも1社に依頼する必要はなく、競争領域と非競争領域で分けて発注することも有効です。これまでのようにシステムを導入して終わりではなく、外部の専門家としてデジタル技術に関する情報提供や人材交流などを通じて自社のDXを継続的にサポートしてもらえる関係をITベンダーと築いていく必要があります。

ITベンダーを比較・選定する上で特に重要なのは、ITベンダーが自社の構想や要求事項をどの程度理解しているか把握することです。理解に乏しいITベンダーはパートナーとして相応しくないのみならず、システム導入時のカスタマイズの規模が大きくなり、コスト増につながります。

図 構想策定・システム調達における主な実施事項・作成物(例)

図 構想策定・システム調達における主な実施事項・作成物(例)

(出所)当社作成

さいごに

DXとはシステムを導入して終わりではなく、事業の特性に応じた内製化やパッケージ製品の選定、デジタル技術の活用などを通じて組織やビジネスモデル自体を変革していくことです。本コラムの構想策定やシステム調達の要点が皆様の検討の一助となれば幸いです。


1 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート2020年版

2 経済産業省 デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会「DXレポート2」(2020年12月28日)

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