企業における危機管理のトレンド~「災害対応」から「マルチインシデント対応」へ~
新型コロナウイルスの感染拡大をはじめ、近年激甚化している自然災害や大規模サイバー攻撃といった危機は、多くの企業の想定を遥かに超えて、企業の業績に多大な影響を及ぼすばかりか、その存在自体を脅かすケースもあります。本コラムでは、様々な危機事象(マルチインシデント)への対応力強化について、「事象ベース」および「経営資源ベース」両面からのアプローチを解説します。
(1)「事象ベース」の危機管理 ~想定外リスクの識別およびシナリオ分析~
「事象ベース」の危機管理とは、自社にとって、これまでの想定の範囲を超えるような重要リスクを捕捉し、シナリオ分析等を実施して備えることを指します。日本企業の危機管理は、多くの場合、一部の災害や過去の経験のみに基づいて認識したリスクへの個別対応にとどまっているのが現状です。一方、一部の先進企業では、世界経済フォーラムによる「グローバルリスク報告書」 等、各国政府やインテリジェンス機関等が公表するレポートも含めて情報を収集し、メガトレンド(世界全体に大きく影響を与えるような潮流)を把握することで、過去、想定外であったリスクを可能な限り識別しようとする取組みが見られます。このように想定外の重要リスクを識別して、それが自社に与えうる影響についてシナリオ分析を実施し、自社の対応策が十分かどうかを検証しようとする動きは今後増加していくと考えられます。
(2)「経営資源ベース」の危機管理 ~重要な「経営資源」の特定と復旧策の策定~
「経営資源ベース」の危機管理とは、自社にとってコアとなる「経営資源」をあらかじめ特定しておくことで、危機発生時にそれらを早期に確保・復旧できるよう備えることを指します。危機発生時にはすべての経営資源を一律に復旧することは困難であるという現実を踏まえて、リスクベースで優先順位をつけて対応策の十分性を検証していく必要があります。なお、重要な経営資源を特定する際は、自社内にとどまらず、サプライチェーン全体を俯瞰し、社外のサードパーティが保有する経営資源も含めて検討しておくことが重要です。これらを通じて自社における業務のレジリエンス(回復力、復元力)強化を図ることで、危機発生時の事業継続能力を高めることができます。
中長期的な企業価値の向上に向けて
このように「事象ベース」および「経営資源ベース」の両面から危機管理に取り組むことは、事業継続能力の向上にとどまらず、中長期的な企業価値向上に向けた強靭な事業基盤の構築につながります。三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、危機管理をはじめ、リスク管理態勢高度化に向けた各種支援を行っております。ご検討の際は是非ご相談ください。
【関連レポートはこちらから】
危機管理の新潮流~「災害対応」から「マルチインシデント対応」へ~(2021年12月23日)
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