ジョブ型雇用への移行に向けた各社の動き

2022/03/14 熊井 秀臣
Quick経営トレンド
組織・人事戦略
ジョブ型

近年、日本企業で職務やポジションを起点とするジョブ型雇用(以下、ジョブ型)への注目度が高まっている。関連書籍やセミナーも増え、「ジョブ型」という言葉を良く耳にするようになったが、導入には慎重な声も多い。各社の動きを踏まえ今後導入を検討したい企業に向けて、他企業がジョブ型に関心を持ったきっかけや施策の実施状況を紹介する。

ジョブ型に関心を持ったきっかけ

本年8月、当社ではWebセミナー申込者を対象に「ジョブ型雇用の実態調査」を実施した。同調査のうち「『ジョブ型雇用』に関心を持ったきっかけ」への回答を見ると、「多様な働き方や人材の確保を促進したい」の割合が最も高かった。昨今、日本企業でもワークスタイルの変革、高度専門人材の確保などへの対応が求められており、新卒の学生を同じ条件で一括採用する従来のメンバーシップ型雇用に行き詰まりを感じている企業が多いと推察される。

業種により異なる関心のきっかけ

製造業と非製造業で違いが顕著になった項目もある。

例えば「職務価値と報酬が見合っていない社員がいる」は非製造業が36.7%に対して製造業は51.0%であり、「中長期的な人件費管理の必要性を感じている」は非製造業が26.6%に対して製造業は49.0%となっている。このように、非製造業に比べ製造業の方が人件費の適正配分に課題を感じており、その解決策としてジョブ型への移行を検討していることが分かる(図表1)。

【図表1】「ジョブ型雇用」に関心を持ったきっかけ(n=製造業49、非製造業79)

図 「ジョブ型雇用」に関心を持ったきっかけ

(出所)「ジョブ型雇用の実態調査」(当社、2021年)より作成

ジョブ型雇用関連施策の実施状況

このほか、同調査の「ジョブ型雇用に関連する人材マネジメント施策の実施状況」を見ると、ジョブ型の施策として代表的な「職務記述書の作成」は過半数の企業で未実施であり、今後各社で検討が進むと思われる。「職務記述書の作成」にあたっては、自社の人材マネジメントの目指す姿を描き、あらかじめ職務記述書の位置づけや目的を明らかにしておくことを推奨する。また、職務記述書の検討には職場での活用やメンテナンス方法など、運用の視点が欠かせないことを申し添えておきたい。

コロナ禍のような未曽有の事態に直面し、従来の雇用のあり方を継続することに不安や危機感を感じている企業は多いが、変革の機会と捉えることもできる。これまで様子見だった企業も、先行企業の取り組みを参考にしながら、自社の組織風土や改革目的に合わせたジョブ型の検討に踏み出してほしい。

(東京商工会議所機関紙「東商新聞」、2021年11月20日掲載号「データを読み解く」より転載)

 

【資料ダウンロード】ジョブ型雇用の実態調査結果レポート
「ジョブ型雇用の実態調査結果」の資料が必要な方は、資料ダウンロードフォームに必要事項をご記入のうえ、ダウンロードください。

テーマ・タグから見つける

テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。