2022年6月、内閣府の「骨太の方針」[ⅰ]において「Web3.0の推進に向けた環境整備の検討を進める」と盛り込まれました。また、7月には経済産業省内の横断組織である「大臣官房Web3.0政策推進室」が設置され、Web3.0関連の取り組みが一層加速することが期待されます。しかし、ビジネス領域では、税制や知財の権利などの法整備が整っておらず、海外と比較すると思うように進んでいないのが現状です。
デジタル庁のWeb3.0 研究会の報告書[ⅱ]によると「個々のテクノロジーやサービス・ツールが、今後どのような発展を遂げていくかは未知数であるものの、グローバルな経済社会において一定の影響力を有することを想定すべきである」としており、あらゆる産業領域において、Web3.0の影響を見定めることが重要といえます。本コラムでは、Web3.0の概説に加え、ブロックチェーン技術の活用が進むことによるビジネス構造への影響について解説します。
Web3.0 とは
Web3.0の関連サービスとして、画像などデジタル資産の所有権(NFT)のように特定業界にとどまるものから、組織の在り方を抜本的に変革するような構想(DAOなど)まで、領域・次元ともに既に多様なサービスが存在しています。しかし、これら個々からWeb3.0を理解しようとすると、本質を捉え損ねる可能性があるので、まずは概念を捉えることが重要です。
経済産業省では、Web3.0により実現できる世界観を「ブロックチェーンによる相互認証、データの唯一性・真正性、改ざんに対する堅牢性に支えられて、個人がデータを所有・管理し、中央集権不在で個人同士が自由につながり交流・取引する世界」[ⅲ]としています。Web3.0以前の取引などコミュニケーションは、発信者と利用者が分かれた一方通行型である「Web1.0」から、SNS等にみられる双方向型の「Web2.0」へと発展してきました。この流れを踏まえ「中央集権不在」が何を指すのかを紐解いていきます。
「中央集権不在」の恩恵とは
Web3.0における中央集権といえば、Web2.0のアンチテーゼとして生まれた背景から、GAFAMなどの巨大プラットフォーマーを想定する方が多いかもしれません。しかし、あらゆる領域・次元で活用されることを考えると、業界・業態を問わず確固たるポジションを築いている大企業も対象となり得ます。
「中央集権不在」、つまり「企業を介さないことの恩恵」として、サービス等の提供側と受け手側との情報格差がある状態 「情報・権限の非対称性」が生じにくい社会システムの構築が可能となることが挙げられます。
これまでは、信用を担保するために中央集権的な仕組みに依存せざるを得ず、「情報・権限の非対称性」による弊害が避けられませんでした。例えば、売り手である企業は買い手の消費者に対して優位であることが多く、買い手の情報不足により、安価で低品質なモノやサービスしか市場に出回らない「逆選択」やモラルハザードの問題が起こり得ました。この現象は市場での売買だけでなく、経営陣と投資家、雇用主と従業員といった関係においても同様です。
しかし、ブロックチェーン技術による新たな信用担保の仕組みが登場し、「情報の非対称性」の弊害を回避することが可能となりました。たとえば、アメリカでは土地の所有においてブロックチェーンを活用し、仲介者を排除した分散型資産所有の方法が模索されています[ⅳ]。
裏を返すと「情報・権限の非対称性」が課題となっている業種・業界全体も何らかの影響を受ける可能性があるといえます。よって、関連する各企業もWeb3.0の動向への注視が必要といえるでしょう。
[ⅰ] 内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2022」(2022年6月)
[ⅱ] デジタル庁Web3.0 研究会「Web3.0 研究会報告書~Web3.0 の健全な発展に向けて~」 (2022年12 月)
[ⅲ] 経済産業省「経済秩序の激動期における経済産業政策の方向性」(2022年5月)
[ⅳ] https://www.citydao.io/
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