従業員の満足度を測るサーベイ結果を、人事だけでなく従業員のマネジメントなど現場でも活用してもらうため、何らかの形で従業員へもフィードバックを行っているのではないでしょうか。しかしながら、サーベイ結果の統計データを全社ポータルなどに掲載するだけでは十分とは言えません。目的に応じた方法や、フィードバックの体験設計が必要です。前回のコラムでは、サーベイにおいて従業員体験の重要性について述べました。本コラムは、良い従業員体験につなげるための、戦略的な体験設計について解説します。
サーベイ結果を戦略的にフィードバックする方法
サーベイ結果のフィードバック設計に取りかかる前に、まず、フィードバックの対象となる従業員像(ペルソナ)を設定し、従業員像に近い方へのインタビューなどを通じて、行動や思考、感情を理解します。その上で、経営・人事と従業員の接点を洗い出し、フィードバックの目的に応じてより効果的に認知されるタイミングや方法を設定します。たとえば、目的を「マネジャーのコミュニケーション改善」に設定するとします。マネジャーへのフィードバック内容として、1on1開始時に、サーベイ結果から見たエンゲージメントの高い組織の上司・部下コミュニケーションの特徴を情報提供する、という方法が考えられます。その際、その情報が何を意味するのか、どう行動すべきかをわかりやすく伝える必要もあります。
回答から施策まで意味を持たせる「ストーリー」設計
日々生じる人材への課題に対して、経営・人事はさまざまな施策を講じています。しかしながら、経営・人事が機動的であるほど、施策の実行が重視され、施策の背景や狙い、従業員にとってのメリットが、十分に説明されていないケースがあります。サーベイで明らかになった課題に対して施策を打つのであれば、その背景となったサーベイの結果と関連付けて、管理職や特定の部署だけでなく回答している従業員に周知するとともに、その課題を経営・人事として重要視していることを示す必要があるでしょう。つまり、従業員の意見に基づいた対応をする、回答から施策までつながりを感じさせる「ストーリー」を持たせることによって、回答した従業員一人ひとりが、「自分の意見を経営・人事は真摯に受け止めている」「自身の回答が何らかの役に立っている」と感じてもらえる確度が高まるでしょう。
一連の取り組みでサーベイのエンゲージメント向上につなげる
さまざまなアンケートサービスの発展に伴い、気軽に実施できるようになった従業員サーベイですが、実施方法によってはエンゲージメントの向上・低下いずれにもつながる可能性があります。経営・人事が「聞きたいことを聞く」だけでなく、それが従業員にどのような受け止め方をされるのか、サーベイの目的にかなったフィードバックになっているのかなど、従業員にもたらされる良い従業員体験になっているかどうかが重要になります。また、サーベイの結果を踏まえた「ストーリー」とともに、組織のエンゲージメント向上など、課題に対する具体的な施策を講じることができれば、従業員がサーベイに参加する意義を感じることができるでしょう。サーベイ内容だけでなく、従業員体験も考慮することで、本来の目的である「エンゲージメント向上をサポートするサーベイ」となることが期待できます。
【参考文献】
Stephen Wendel(2020)『行動を変えるデザイン』、オライリージャパン
【関連レポート・コラム】
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