学校法人における内部統制システムの整備(私立学校法改正対応)
2023年4月に可決された「私立学校法の一部を改正する法律案」は、2025年4月からの施行が予定されています。今回の法改正は、私立学校が社会の要請に応え得る実効性のあるガバナンス改革を推進することを目的としています。施行までに、各学校法人では、理事・監事・評議員の選任方法などのガバナンス体制を整備し、寄附行為の変更申請が必要となります。加えて、大臣所轄学校法人などでは「内部統制システム整備の基本方針」を策定し、理事会において決定することが求められています(なお、大臣所轄学校法人など以外でも、実情に応じて内部統制システムを整備することが望ましいとされています)。
本稿では、私立学校法の改正で求められている内部統制システムについて解説します。
内部統制システムとは
内部統制システムとは、「学校法人が、その活動を健全かつ効率的に運営するための仕組みのこと」です。
文部科学省が公表した「内部統制システムの整備について」によると、学校法人が整備すべき内部統制は「4つの目的と6つの基本的要素」によって構成されており、企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」における、内部統制の定義を準用していることが分かります。すなわち、学校法人に特有の内部統制システムが全く新たに定義されているわけではなく、会社法などで適用されている内部統制と基本的には同様の取り組みが、学校法人にも期待されていることになります。
具体的な取り組み
これまでも学校法人では、各種規程類の整備、個人情報保護に関わる対応、大学ガバナンス・コードへの対応など、さまざまな内部統制に関わる取り組みが実施されてきました。まずは、現状の内部統制の体制や取り組み状況を整理することから始め、各学校法人の実態に照らして適切な水準の内部統制システムが構築できているかを確認し、必要に応じて高度化に向けた取り組みを検討することとなります。具体的な内部統制の構築・導入に先立ち、一連の確認・検討結果を踏まえて内部統制システムとして整備すべき内容を取りまとめた上で、「内部統制システム整備の基本方針」として文書化し、理事会で決定することが必要です。
内部統制システムとして整備する事項が、文部科学省「内部統制システムの整備について」に例示されていますが、実際の取り組みでは、この内容を参考にしつつ、学校法人それぞれが自法人に適した内部統制システムを検討することになります。
まとめ
私立学校のガバナンス改革が具体性を持って動き出し、内部統制システムへの要求事項も明確になりつつあります。各私立学校は、法改正に対応するという趣旨に加えて、複雑化する経営環境に対応して安定した学校運営を行っていくためにも、内部統制システムの整備を行い、ガバナンスを強化していくことが求められています。
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