改正物流総合効率化法施行で企業が対応するべきこと

2024/12/05 大重 貴之
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物流・ロジスティクス
法改正

働き方改革関連法の適用により、運輸業界においてドライバー不足が生じている「2024年問題」は、物流コスト――特に輸配送費の上昇による物価上昇の他、路線バスの削減・廃止など、市民生活にも少なからず影響を及ぼしています。
このような状況を解決すべく、2024年5月、物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)が改正され、物流業務委託者(荷主)・物流事業者双方に規制的措置が導入されました(2025年4月から段階的施行)。
本コラムでは、主に荷主企業に対する規制的措置を解説するとともに、これを踏まえて、今後荷主企業が物流業務において留意するべき事項について提案します。

物流効率化への取り組み

物流業務といっても幅広くありますが、喫緊の課題として、輸配送における効率化への取り組みが強く求められています。具体的には、トラックの積み下ろしにおける荷待ち・荷役時間の短縮と、主にチャータートラックでの積載効率向上が挙げられています。改正物流総合効率化法では、これらへの取り組みが、実際に運送を委託する発荷主はもとより、納品先である着荷主に対しても「努力義務」として課せられます。
荷主企業(発荷主、着荷主)の対応としては、まずは自社の工場・倉庫・物流センターなどでの荷待ち・荷役時間、積載効率の現状把握が必要になります。このデータを踏まえ、今後、新法施行までに明らかにされる数値目標(国が策定する努力義務の判断基準)に向けて、改善策を策定・遂行していくことが求められます。

【図表1】改正物流総合効率化法における義務事項
改正物流総合効率化法における義務事項
(出所)当社作成

「特定事業者」の選定と課せられる義務

2025年度は、全ての荷主・物流事業者で物量調査を行い、一定規模以上(現状の素案では年間9万トン以上)の貨物を取り扱う荷主・物流事業者は、「特定事業者」に指定されます。着荷主も含めた荷主の「特定事業者」には、2026年度から次のような項目が義務として課せられ、取り組みの実施状況が不十分な場合、罰則規定も適用されます。

(1) 物流効率化に向けた取り組み(前項)
(2) 物流に関する中長期計画の策定と報告
(3) CLO(Chief Logistics Officer、物流統括管理者)の選任

上記(2)の中長期計画には、判断基準で示される取り組み事項の事例を踏まえ、義務となる施策ごとに、自社が計画期間内にどのような取り組みを実施するかを計画することになります。
上記(3)のCLOの責務としては、自社の物流全体を統括管理する者として、(1)の実現に向けた施策を策定することですが、これにとどまらず、ロジスティクスの観点から従来のビジネスプロセスの革新を提起することも期待されます。

今後、荷主が取り組むべきこと

荷主の「特定事業者」は、貨物取扱量の上位約3000社と推定されますが、これらに加え、物流事業者(トラック運送業、倉庫業)の「特定事業者」と取引関係にある荷主も、「物流効率化に向けた取り組み」の対象となります。例えば、「特定事業者」である発荷主が、「特定事業者」であるトラック運送事業者に配送委託して納品した場合、着荷主が「特定事業者」ではなくても、その配送効率化のための協力が必要となります。具体的には、納品ロットの見直し、着時間指定の緩和・撤廃、荷待ち・荷役(荷下ろし)時間短縮などです。努力義務≒何もしなくていい、というわけにはいきません。発荷主側は、顧客が指定する納品条件が物流効率化を妨げる内容であれば、その改善を顧客に要請する努力が求められます。
また、本コラムでは触れませんでしたが、改正物流総合効率化法では、トラック運送事業者や軽トラック事業者にも、効率化や事業者間取引などに関する規定が盛り込まれており、各々対応が必要になります。
これまで、物流効率化は荷主企業が単独で取り組む場合が多かったですが、改正総合物流効率化法では、発荷主、着荷主、物流事業者が協力し合って、全体最適を目指していくというメッセージが込められていると理解できます。

【図表2】物流に関わる委託・契約の構造と効率化のために要請すべき事項
物流に関わる委託・契約の構造と効率化のために要請すべき事項
(出所)当社作成

まとめ

改正物流総合効率化法(2024年5月改正)は、2025年度には努力義務の判断基準が示され、各社による貨物重量の算定や、物流効率化指標(荷待ち・荷役時間、積載効率など)の現状把握が求められます。物流業務を物流事業者に外部委託している荷主企業は、外部委託先と十分に連携して対応する必要があります。
これを機に、自社の物流全体を見つめ直したり、場合によっては、仕組みやツールの導入を検討したりする契機になると、前向きに捉えることも必要ではないでしょうか。


(参考資料)

【関連サービス】
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執筆者

  • 大重 貴之

    コンサルティング事業本部

    サステナビリティビジネスユニット サステナビリティ戦略部

    シニアマネージャー

    大重 貴之
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