「新しい公共」の可能性と課題
少子高齢化や国民の価値観の多様化、複雑化などに伴う公共サービス需要の増大と財政余力の低下により、すべての公共サービスを自治体だけで担うことが困難となりつつある。こうした中で、行政内部への住民、市民団体の人材の登用や、公共サービスの市民団体への委託、市民団体が行う公益的活動の促進・支援など、市民が主体的に公共サービスの担い手となる「新しい公共」の取り組みが活発化している。本稿で事例研究の対象とした防犯のほか、高齢者福祉や子育て支援など、公共サービス需要が急速に増大し、行政による対応力の限界が顕在化している分野では、「新しい公共」の取り組みが既に数多くの地域で実施されており、今後より一層進展すると考えられる。
ただし、「新しい公共」の取り組みによって期待通りの効果を得るためには、適切な事業分野と団体の選定、促進・支援する市民団体による活動の公益性の範囲の明確化、事業分野や事業内容、対象の選定など意志決定に市民が参画する場合の決定の正当性、公平性、合理性の確保、担い手となる団体の育成など、数多くの留意すべき課題がある。防犯分野の実例でも、活動団体や活動内容に対する市民の認知や理解、活動団体の組織基盤や活動の継続性などに関して課題が見られた。しかし、市民の自主的な活動が警察の対応しきれない面を補完し、地域の安全性向上に大きく寄与していることも明らかになった。本稿で指摘したような課題に適切に対応し、地域の実情を踏まえた合意形成と戦略のもとに取り組めば、「新しい公共」は、地域の活性化に大きな効果をもたらすと期待される。
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