救急車による救急出場件数は年々増加傾向にあるが、厳しい社会経済情勢を背景とした財政難から地方自治体においては、救急隊や隊員の充実を図る事は困難となっており、救急部隊1隊あたりの負荷の拡大、現場到着時間の遅延が全国的な課題となってきている。そして将来的にも高齢化の進展、核家族化の進展にともなって、救急需要の増大は進むものと考えられている。
今後の救急需要対策においては、救急需要の適正化、公共救急体制・システムの改善、有料の民間救急サービスの可能性検討、民間活用による公共救急サービスの質確保・向上といった4つの視点が重要と考えられる。本レポートにおいては、民間事業者および地方自治体消防本部と開催した研究会成果を踏まえて、民間活用による公共救急サービスの質確保・向上についての検討を行っている。
救急関連業務の分業と民間ノウハウの活用可能性についての検討の結果、コール・トリアージの実用化が可能となれば、各種事業者が有する既存資源・ノウハウを適正に活用することにより、指令、搬送、現場処置、現場確認の各段階において、公共救急サービス支援を実施することは技術的観点からは可能と判断された。
事業採算性の観点からは、スケールメリットを最大限に生かすためにも広範囲を営業対象エリアとして捉える必要性等から、複数自治体によるサービス対価の応分負担が必要と評価された。現在、消防行政の体制強化・行財政運営改善を目的とした消防広域化の動きが出てきている。救急需要対策への民間資源の有効活用を図る上で、消防広域化検討の枠組みの中で、救急需要対策への民間資源活用可能性について検討することが望ましい。
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