地域経済学の視点から見た関西圏の将来

2010/01/01 遠香 尚史
地域経済

わが国では、人口や企業の首都圏への一極集中や中部圏・地方部の相対的なシェア向上が進む一方で、関西圏では長期にわたり人口流出・本社機能の流出が続き、その経済的地位の低下が歴然としている。
本稿の第1の目的は、このような、関西圏が低迷するに到った要因の概略について、地域経済学の分野で採られる考え方を踏まえて整理し、提示することである。具体的には、関西圏と他地域間の人口移動と製造業立地動向に焦点を当て、循環的な因果関係やプロダクト・サイクル理論などの視点から関西圏の地域経済システムを概観することで、関西圏の人口や製造機能が流出してきた要因把握を試みている。
本稿の第2の目的は、関西圏の低迷要因を踏まえ、関西圏の経済的地位の向上に向けた施策の方向性を提示することである。少子高齢化が進む中で、地域の生産能力を向上するためには、1人あたり労働生産性を向上することが解決の糸口となる。本稿では、そのために関西圏が取り組むべき施策の方向性として、研究開発投資、人的資本の質の向上、競争力強化に向けた環境の形成を掲げている。
本稿での要因分析は定性的な把握に留まっており、関西圏に累積した多岐にわたる課題の解決策を網羅するまでには到底及ばないものの、関西圏がわが国における地位を回復し、国際競争力を高めるためのヒントとなれば幸いである。

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