政策評価と社会的合意形成
わが国において、国や地方自治体が実施する政策に対する評価(いわゆる政策評価)が実施されるようになって、すでに数年以上が経過している。しかし、評価結果の公表等による説明責任の確保を越えたより積極的な活用によって、政策評価がその実施コストに見合うだけの真価を発揮しているのか、という観点からはまだまだ十分な成果が出ていないように思われる。国においては、昨年の政権交代後の民主党政権の下で、政治主導によりようやく政策達成目標明示制度、事業仕分け、行政事業レビュー、政策コンテスト等、評価結果を活かした政府の意思決定の実務が本格化し始めている段階である。
このような状況を背景として本稿では、公共政策デザインの主要な要素として位置づけられる政策評価の、社会的合意形成との関係を取り上げる。政策評価は政策の立案・実施に対する社会的な合意の形成に貢献しうるのか、というのが、その具体的な問題意識である。そのような問題意識に照らして、政策評価の社会的合意形成への活用の可能性やその態様について、概念(考え方)および実務上の取り組み状況を、政策評価の種類ごとに整理している。
結論的なメッセージを予め総括すれば、①政策評価の種類を問わずに、政策評価は社会的合意形成のツールたりうること、②しかしその源泉は、政策評価の種類によって異なっていること、③合意形成がなされるパターン(時間の経過と合意形成の程度との関係)も、政策評価の種類によって大きく異なっていること、そして、④政策評価による社会的合意形成への貢献の実務も、その現状に大きな相違があること、等があげられよう。
そして最後に、政策評価が、公共政策の企画立案および実施の局面における社会的合意形成に今後より良く貢献していくために、(政策評価制度およびその運用の改善という点以外で)実務的にどのような改善が望まれるか、という観点からの若干の提案を行っている。
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