国際協力と国民的合意形成

2010/10/01
国際協力
ODA

日本の政府開発援助(ODA)予算額は1997年をピークに下降の一途をたどっており、2010年度の予算額は1997年度に比べ2分の1近くにまで削減され、各国比較でもかつて世界一だった日本のODAの実績額は5位に転落した。この背景には厳しい財政事情もあるが、国民の支持が十分に得られていないという要因もあると言われており、国民意識調査によるとODAへの積極的支持は長期トレンドでは減少傾向にある。政府は2003年に定めたODA大綱に示される政策に沿ってより効果の高い援助を目指し、ODAの広報活動にも力を入れ、国民の理解と支持を高めるべく取り組んでいる。
一方、ODA予算が増額基調にある英国においては、途上国の貧困削減を開発援助の最重要課題と位置づけ、国際開発省(DFID)が政府との間で結ぶ公共サービス協定(PSA)によって、国民に対するODAの成果の説明責任を明確にしている。英国のODAに関する国民意識調査では「途上国の貧困問題に関心がある」人たちの割合は70%を超えているが、途上国における汚職や援助の無駄についても問題意識は高い。
さらに、他の主要援助国であるフランス、ドイツ、米国のODA政策とも比較すると、ODAの政策目的には「国益」と「途上国開発」という2つの軸が見られ、国民の理解と支持に密接に関連していることが窺える。日本と英国の国際協力をめぐる国内事情や国民の意識の違いもあり、単純に比較することはできないが、日本のODAに対する国民的合意形成のあり方について、英国との比較を通じて考察する。

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