国の行政機関における内部統制

2010/10/01
内部統制
行政

諸外国および日本国内の企業による粉飾決算等の不祥事を受けて、内部統制に関する議論が高まり、法整備も進展した。諸外国では、公共部門においても、民間部門で発展した内部統制の概念や制度を反映する形で仕組みの構築や改善が図られている。
日本の公的機関に関しては、これまで明示的な内部統制の枠組みが整備されていなかったが、近年、その必要性に対する認識が高まっている。これは、民間部門と同様に、公的機関においても不正が続発している現状に対し、その打開策として、内部統制に対する期待が高いためである。地方自治体や独立行政法人については、それぞれの内部統制に関する研究会が総務省において設置され、その意義が確認されているところであるが、国の行政機関についてはまだ体系だった議論は行われていない。
内部統制は、日本において広く採用されている定義によると、「業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内のすべての者によって遂行されるプロセス」であるとされ、組織の運営のあり方全体に関わる広範な概念・活動である。本稿では、国の行政機関のあり方について検討するうえで、特にモニタリングの機能に焦点を当てて議論を行う。モニタリングを取り上げる理由は、国の行政機関においてはすでに多様なモニタリングの形が存在しており、そのあり方について見直す必要があること、また、モニタリングを通じて蓄積された知識やノウハウが内部統制の適切な構築や機能の充実に貢献することから、議論のきっかけになると考えるためである。
本稿では、まず、近年の内部統制に関する主要な議論を整理する。次に、国の行政機関におけるモニタリングの現状について、①複数の行政機関を対象とするモニタリング機能、②個別の行政機関のみを対象とするモニタリング機能、に分けて概観し、その課題を整理する。さらに、諸外国の公共部門におけるモニタリングの仕組みについて、集権型、分散型の2つのアプローチを取り上げ、それぞれの具体的な事例を示す。最後に、国の行政機関におけるモニタリング機能を再構築するための方向性について検討する。

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