なぜ民主党政権はTPP反対派の説得に失敗したのか?~TPPの政治学~

2013/01/31 秋山 卓哉
国際政治

2010年10月に、菅直人首相(当時)が「平成の開国」として、環太平洋戦略 的経済連携協定(TPP)交渉への参加検討を表明して以来、TPPへの関心が急激 に高まっている。菅首相を継いだ野田佳彦首相(当時)もTPP交渉参加入りに積 極的であったが、2012年12月28日現在、日本のTPP交渉参加は実現していな い。

本稿は、日本のTPP交渉参加入りが実現していない要因を明らかにすることを 目的とし、その原因を「集合行為問題」と「コミットメントの問題」から説明する。 菅首相および野田首相(当時)はともにTPPに参加する意向であった。しかし、 両首相の支持率が低く、2011年半ば以降、衆議院選挙の開催が予想されたことか ら、選挙で少しでも確実に票を獲得しようとすれば、票を集約できる力を持つ業界への依存度が高まり、政治 家はそうした少数派の利益に配慮せざるを得ない。このように両首相の支持率が低く選挙が予想される状況で は、「集合行為問題」が発生しやすかったと言える。

また、TPP支持派はTPP交渉の場で日本の立場を主張することができるとする。しかし、TPP反対派のみ ならず、国民の間では、日本の外交は対米追従であるという認識が強い。そのため、実際には日本がTPP交渉 の場で自国の立場を主張するという約束は実現しないだろうとTPP反対派は予想するため、彼らが翻意するイ ンセンティブは発生しない(コミットメントの問題)。

このように2010年から2012年にかけて、集合行為問題とコミットメントの問題が発生しやすい状況が成 立していたため、日本のTPP交渉参加入りが実現しなかったと考えられる。

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