21世紀のわが国の国土資源管理を展望する際に、直視しなければならない問題として、密かに進展する「土地所有者不明」という事実がある。これは土地の所有者を特定する不動産登記簿等の所有者台帳に相続等による所有者変更の事実が記載されないままに、第三者が所有者を特定できなくなる症状を指している。
所有者不明の土地は、新たな利用者による農地・森林での事業化を阻害したり、東日本大震災の復興過程における土地取得の足かせになったりしたことで近年、社会問題として認識が深まりつつある。
所有者不明となっている土地所有者はすでに10万人単位で存在していると推定され、今後、相続を経ながら拡大していくことが見込まれることから、一刻も早い制度的な対応が求められる。しかし、所有者不明の問題はいざ新たな利用需要が生まれなければ、顕在化しないため、問題解決に向けた抜本的な取り組みが進みにくい状況にある。
しかし、わが国をとりまく食糧、エネルギー問題等を踏まえれば、これら資源を産み出す農地・森林といった自然資本が所有者不明の問題によって利用できない事態は避けなければならない。
そこで本稿では、これから数十年続く人口減少下で深刻化していく所有者不明の問題について、共通認識・コンセンサスの土台となる実態や経緯に関する分析、そして制度的な対応状況を紹介するとともに、今後の適切な国土資源管理に向けて取り組むべきことの方向性(処方箋)を私案として提示する。
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