「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)の制定から15年以上が経過し、公共施設等運営権制度(コンセッション)の導入等、PFI事業のさらなる拡大に向けた取り組みが推進されている。ただ、拡大の一方で、事例の蓄積にともない前例主義に基づく説明が可能になったことにより、検討されるべき論点が十分に検討されないまま、置き去りにされている面もあるように思われる。
本稿では、そうした実務上の論点について、PFI事業の先進国とされるオーストラリアとの比較を通じ、今後の改善可能性を検討する。具体的には、PFI事業の根幹であり、PFI事業の事業者選定を進めるうえで重要とされる「民間事業者との対話の方法」「リスク分析」の面から、日本とオーストラリアのPFI事業における実務面の違いを整理する。
「民間事業者との対話の方法」「リスク分析」のどちらについても、基本的な考え方は日本・オーストラリアで同様であるが、その具体的手法や運用面ではオーストラリアの方が発展している。また、実務レベルでは参考とできるものも多くある。それゆえ、海外の事例について、実務のレベルに踏み込み、ひとつひとつ適切に咀嚼したうえで、「日本化」を図ることで日本のPFI事業はさらなる成長が可能である。また、こうした実務レベルでの成長は、PFI事業の本来の趣旨たるリスクの適切な管理を実現するうえで極めて重要である。
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