災害時要援護者とは、高齢者や障がい者、妊産婦、乳幼児、外国人等、災害時に援護を必要とする人である。東日本大震災での教訓を踏まえ、災害対策基本法が改正され、市町村長に「避難行動要支援者名簿」の作成が義務付けられるとともに、本人同意のもと避難行動要支援者名簿を地域の自主防災組織等に事前提供することが可能となった。さらに、平成28年4月には「障害者差別解消法」が施行され、障がい者への「合理的配慮」が自治体に義務化された。
このように災害時要援護者対策に関わる制度等が整いつつあるなかで、対策の進捗状況や課題を把握するため、全国の自治体を対象とするアンケート調査を実施した。あわせて、阪神・淡路大震災で大きな被害を経験した神戸市の災害時要援護者対策を学ぶために「地域防災セミナー」を開催した。
その結果、避難行動要支援者名簿の作成は全国の自治体で進みつつあるが、地域への名簿提供に着手している自治体は約4割、個別避難支援計画の作成に着手している自治体は約3割にとどまることが分かった。また、指定避難所や福祉避難所の準備状況については自治体間で大きなばらつきがあることが分かった。
災害時要援護者対策を進めていくうえでは、事前準備から災害対応にいたる「シームレスな体制・活動」の構築や、支援の受け手と担い手の人数ギャップの軽減等が課題である。今後、「シームレスなチームをつくり、話し合うこと」、「避難行動要支援者の名簿掲載者を分析すること」、「災害時要援護者対策のPDCAサイクルを回していくこと」により対策の具体化を進めていくことが求められる。
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