2020年代の日本経済~活路は生産性の向上にあり~

2017/07/27 中塚 伸幸
国内マクロ経済

当社では、2030年までのわが国経済を展望した中期見通しを作成した。この中で、実質成長率は足もと2010年代後半の年平均1.0%程度から、2020年代前半には0.7%に、後半には0.5%に低下することを見込んでいる。潜在成長率についても、足もとの0.8%程度から2020年代には0.6%程度にまで低下するものと見込む。潜在成長率は労働力、資本装備、全要素生産性の3つの要素のトレンドをふまえて算定されるが、いうまでもなく少子高齢化の進展による労働力人口の減少が、潜在成長率を押し下げる主因である。女性や高齢者の労働参加をふまえても、労働力人口は今後2030年までに300万人程度減少し、成長へのマイナス寄与は避けられない。資本装備増強によるプラス寄与も期待できず、したがって労働力の減少を打ち返して成長を維持するためには、全要素生産性の伸び、すなわち生産性の向上が不可欠である。当社の試算では、全要素生産性の伸びが足もとよりも高まることを見込んでいるが、これは、省力化投資、産業構造の転換、新たな高付加価値商品・サービスの開発、働き方改革等、生産性向上に向けたさまざまな取り組みが一定の成果を生むことを前提にしている。労働力の減少に加え、海外主要国でも高齢化が進展し世界経済の減速が予想されること、また社会保障支出が拡大する中で財政健全化への取り組みが急務である等、他の対処すべき課題も認識しつつ、持続的な成長のために、生産性向上をはじめとした官民挙げての努力が強く求められるところである。

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