日本の財政の現状と中長期的な課題

2017/07/27 中田 一良
国内マクロ経済

景気回復を背景に、国と地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の赤字は縮小しているものの、赤字であることに変わりはなく、債務残高は増加が続いている。日本の財政の悪化の背景には、高齢化にともなう社会保障給付費の拡大や補正予算による歳出額の拡大、国際的にみた租税負担率の低さといった構造的な要因があると考えられる。

高齢化の進展とともに、今後も医療、介護を中心に社会保障給付費は拡大が続くと見込まれる。他方、保険料の主な負担者である20~64歳人口は減少が続き、給付のための財源を確保することが難しくなる。このため、社会保障分野での公費負担がいっそう拡大する可能性がある。さらに、人口減少、高齢化の進展により、中長期的には潜在成長率が低下し、税収が期待通りには増加しない可能性もある。このように今後、日本の財政を取り巻く環境は厳しくなると予想される。

内閣府の試算によると、経済成長率が現在の潜在成長率並みにとどまる場合、日本の基礎的財政収支は2020年度以降、悪化する見込みである。このような中、財政健全化に向けて、将来的には消費税率のさらなる引き上げは避けられないが、その実現には時間がかかるだろう。したがって、当面の課題は歳出の増加を抑制することであり、そのためには補正予算による安易な歳出拡大は避けるべきであると考える。また、高齢化が進展する中、世代間の所得移転に依存する所得再分配は持続性の観点から限界があると言える。今後、財政、社会保障の持続性の観点から所得再分配のあり方は、見直しを迫られることになるだろう。

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