PFI事業や指定管理者制度の導入が進み、民間事業者のノウハウの導入を図る事業分野や事業形態も多様化している。指定管理者制度や公有財産貸付、PFI的事業を複合させた複雑な事業において、民間事業者から事業プロポーザルを募集する事例も増えている。
単なる経済的条件のみで事業者を選定することがふさわしくないこうした複雑な事業では、従来、民間事業者から非公式に事業提案を求め、その結果を募集要項の事業提案条件に反映させて事業プロポーザルを募集するケースが多かった。しかし、事業者選定プロセスにおいて公正性・透明性の確保を求める近年の社会的要請から、PFI事業の手続きに学び公募前に事業実施方針を公表したり、二段階選定方式により事業者を募集するケースが増えている。
本稿では、こうしたPPP事業において民間事業者を募集する際の課題や留意点について述べる。本稿がPPP事業を企画している行政担当者の今後の取り組みの一助となれば幸いである。
(1)事業目的や事業公募者の意図を民間事業者に明確に伝達することが必要
そもそも、対象となる事業の目的や事業内容が民間にとってわかりやすいものになっているか民間事業者の目線で十分に検討し、事業目的や事業公募者の意図を民間事業者側に明確に伝達する必要がある。公共施設と民間施設を一体的に整備する場合や施設運営の内容を重視する場合など、事業条件が複雑・高度になればなるほど、事業目的や事業公募者の意図が見えにくくなる。こうした場合はPFI事業の実施方針のように、正式な事業者募集の前に事業の目的や概要を示した事業実施方針を公表し、民間事業者から意見・提案を募集することが有効である。
(2)民間事業者の競争環境に配慮した民間事業者との対話が必要
行政内部で事業内容をつめきれない場合、事業に関する意見よりも事業アイデアの提案募集に重点をおいた事業実施方針を公表するケースがある。この場合、まず公募自体を実施する意義があるかどうか十分に検討するとともに、最終的な事業者選定プロセスを明示したうえで実施する必要がある。単なるプロモーションのためのアイデアコンペなど民間事業者のアイディア・ノウハウを安易に募集することは、民間側に過度な負担を強いるだけでなく、民間事業者から事業パートナーとして信頼されず、事業公募者が本来求めたい事業者をかえって遠ざけてしまう可能性があることに留意する必要がある。
また、民間事業者からの意見・提案の結果をHP等で公表することがあるが、公表方法についても十分な検討が必要である。公表すること自体は、事業者選定プロセスの透明性の観点から必要であるものの、公表する内容や範囲をあらかじめ明確にする必要がある。応募する民間事業者のノウハウやアイデアが応募者の了解無しに公表されると公正な競争を阻害し、事業化プロセス全体に混乱をきたす可能性もあることに留意する必要がある。
(3)公正で透明性の高い事業者選定プロセスの採用が必要
上記のような一般公募方式によらず公募型指名(選定)方式により、事業提案を求める方が民間事業者からみれば応募しやすいケースがある。この場合、資格審査の一環として、事業の実施に対する基本的な考え方や事業の実施体制、施設計画、運営計画、維持管理計画、資金調達等の基本的な考え方を記載した一次提案書を提出してもらい、応募者との個別対話方式を通じて最終的な事業提案書を求めることが有効である。ただし、こうした個別対話方式においても公表すべき情報と秘匿すべき情報を明確にしておくことが必要であるほか、中立・公正な立場の学識経験者等を審査委員としたり、市民公開プレゼンテーションを実施するなど事業公募者の恣意性の介入や公募者と応募者との間の癒着等を防止する仕組みを予め整備しておく必要がある。
民間事業者の競争環境と事業者選定の公正性・透明性を確保した事業者選定方法が全国各地で実施されており、今後、その試行錯誤による知見について関係者から情報発信されることが望まれる。
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