PFI事業や指定管理者制度など、公共施設の整備・運営に民間事業者のノウハウや資力を活用する民活型の公共事業が大幅な増加を見せてきているが、その一方で民活手法を運用する上での限界や課題が明らかになってきている。
その課題の一つが、いわゆる「性能規定」の問題である。従来の公共事業のようにあらかじめ発注者が求めるサービスの内容を「仕様」として細かく規定するのではなく、サービスの性能水準のみを定めることで、その実現のための仕様や方法を民間事業者に委ねようとする「性能規定」の考え方は、もともとは民活手法等に限られたものではない。しかし、「民間の創意工夫を導き出す」との発注者側の狙いや、設計・施工・運営を一体化して発注するケースが多いPFI事業としての性格から、多くの民活事業にこの「性能規定」の考え方が採用されている。
しかしこの「性能規定」に関しては、発注者となる公共主体と、事業に応募し実際に遂行しようとする民間事業者との間で、その解釈に一種の「ずれ」が生じているようである。特に、「民間の裁量に任すといっても、しっかりとしたサービスを提供してもらわないと、行政責任として問われたときに困ってしまう」公共主体と、「性能を最低限満たせば文句は言われないだろう。だから提案時には曖昧にしておこう」という民間事業者との思惑がかみ合わないケースが多くある。
発注者(公共主体) | 応募者・受注者(民間企業) | |
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建前 |
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本音 |
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その結果、事業者が決定した後、実際に業務を推進していく際に認識の違いが明らかになり、事業自体の円滑な進行に影響が出てきてしまうこともある。例えば、PFI事業においても、事業者が決定した後の契約協議プロセスで、当初の「性能規定」に基づく要求水準の解釈のずれが争点となって、契約が予定から遅れてしまう事例も見られる。また、性能規定による募集をしたにも関わらず、事業者選定時の提案自体、思ったほどの魅力的な内容にならずに、実質的に価格勝負になるというケースもある。
こういった問題を回避するための即効薬はまだ出てきていないが、一つのヒントとしては、やはり「モニタリング」(サービス水準達成の検証)の考え方を、事業提案の段階から公民双方が明確化・共有化していくことが求められるのではないかと考える。例えば、バランス・スコア・カードによるサービス水準の検証と改善の仕組みを、当初から民間事業者の提案に求め、その内容に従って業務を推進していくことが考えられる。性能規定はいわば「アウトカム」を重要視する考え方であり、アウトカムとしての「KPI」の設定自体を、事業提案者自らに自体に委ねることは、まさに理にかなっていると考える。
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