みなさんの住む自治体の文化行政は、次のA市、B市どちらに近いでしょうか。そもそも知らないという人も多いと思いますが...
[A市]
クラシック音楽のコンサートを時々しているみたいだが、文化ホールはほとんど利用されず閑散としたイメージがある。年に数回、格安(無料)で人気歌手のコンサートやアニメ映画を上映し、その時は、整理券を得るために長蛇の列。職員は市役所の人で、3年で異動するので、おもしろい企画を持ちかけても無駄。特定の団体・協会に補助金が継続的に出ているが、高齢化が進んできており現状維持が精一杯。
[B市]
文化は、まちの活力源。まちの文化の顔となるイベント(祭)を、文化団体、青少年団体、商店街、自治会等と連携して開催しており、市民の文化活動が元気。行政は、民間では実施することが難しい、体験型のワークショップ、初心者向けの解説付きのコンサート、まちの中での芸術作品の展示など、多くの人が気軽に文化にふれることができる機会をつくっている。アーチストの芸術創造活動を支援していて、それまで考えたこともない新しい視点を住民はもとより全国・世界に情報発信している。担当スタッフは、専門職なので、いろいろな助言をもらうことができる。市民提案制度で文化事業を公募しており、地元の文化団体が切磋琢磨して、おもしろい企画や、まちのためになる企画を考えている。他のまちの人からも、暮らしやすく元気のあるまちと一目置かれている。
残念ながら、A市がわが国の多くの自治体の文化行政の姿です。
文化行政は、福祉・教育・都市計画等と比べ、政策の自由度が非常に大きいことが特徴です。しかし、施設整備が先行する中、ソフトの整備が遅れ、その裁量の大きさを十分に活用できなかったことが文化行政の課題となっています。
このような状況の中、経済、福祉、教育等の影に隠れ気味ですが、地方自治体の文化行政についても、構造改革が迫られています。何のために、税金を投入しているのかが問われ、財政再建、行政評価、市町村合併、指定管理者制度など諸制度が変化する中で、特にA市のような自治体では文化予算を削減する動きがみられます。
私たちが文化振興計画の策定のお手伝いの業務をする際には、何のために、税金を利用して文化行政をするのかを真剣に考え、そして、地域の文化資源と課題、住民の意識、首長や職員のやる気、近隣自治体との兼ね合いをふまえながら、重点的に何に取り組むかという議論を大切にしています。
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