人材育成が鍵~産学連携プロデューサー養成の試み

2007/10/15 美濃地 研一
人材育成

「科学技術創造立国」を標榜する我が国は、財政状況が緊迫した状態にあっても、科学技術関連予算を増額し、重点分野の研究開発の促進や科学技術人材育成に力を入れている。また、企業・大学・国・自治体などが、科学技術を基盤とした成果を得るために、それぞれの立場から産学官連携に熱心に取り組むようになり、「産学官連携ブーム」の様相を呈している。
しかしながら、この産学官連携ブームが、それぞれの立場の意図した結果をもたらしているかどうかについては、疑問も残る。経済産業省が旗振り役となって推進した大学発ベンチャーも目標とした千社を大幅に上回る企業数となったが、企業としての実力が不足し、経営がうまくいかない例も多いという。そもそも異なる目的を持って存在する企業・大学・国・自治体が、産学官連携という名のもとで同床異夢の状態にあるという見方もある。
こうした実情や見方があるとはいえ、私自身、自治体の産業支援機関で働く機会を得て、産学官連携のコーディネートに取り組んだ経験からすると、産学官連携の重要性はますます高まり、その巧拙が成果を大きく左右することには変わりはないと確信している。そして、連携が成功するかどうかは、その中心に位置するプロデューサーの質に大きく依存していると考える。産学官連携の取り組みの中で、シナリオを描き、必要なヒト・モノ・カネ・情報を集め、それぞれの主体の利害を調整し、最終的な成果を生み出すことをミッションとするプロデューサーの存在が重要である。
もちろん、こうした万能の天才がどこにでもいるわけでもなく、一人ですべてをこなすのは現実味に欠けているとの指摘もあろう。だが、少なくともそうした能力を持った人材を理想として、その育成に取り組むことは必要である。産学連携で国内有数の実績を有する立命館大学の産学連携部門(理工リサーチオフィス)では、こうした考え方で、産学官連携のプロフェッショナル「テクノプロデューサー」の養成に組織的に取り組んでいる。また、立命館大学がそのノウハウを生かし、当社とタイアップする形で、経済産業省のMOTプログラムの開発や、大阪市の外郭団体である「おおさかナレッジ・フロンティア推進機構」の「研究シーズの事業化を推進するプロデューサー養成講座」運営を行った実績もある。
現在の産学官連携の取り組みをブームに終わらせないためにも、こうした人材育成の重要性について議論がなされ、またその取り組みが注目を集めることを望んでやまない。

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