地域公共交通の維持と地域公共交通会議の役割

2007/11/05 筒井 康史
地域公共交通

地域公共交通を取り巻く環境変化

平成14年2月に施行された道路運送法の改正により、乗合バス事業における需給調整規制の廃止が行われた。いわゆる規制緩和で、乗合バス事業の自由競争が促進され、新規事業者による参入が容易になった。その一方で、届出から6ヶ月後には事業者の意思で、乗合バス事業からの退出を行うことが可能となった。
これまで、乗合バスの利用者は昭和40年代前半がピークで、人口が増加していても自動車の普及により一貫して減少した。最近も、高齢化から交通弱者は増えていたが、人口減少時代を迎え過疎化の進行により、新規事業者の参入が増えるどころか路線バスの撤退が進んでいる。地域住民の日常生活を支える「地域公共交通」の維持・確保が大きな課題となっている。
こうした課題への対応として、地域の実情やニーズに応じた、また、安全・安心な地域公共交通を普及・促進し、活力ある地域社会の実現を図っていくことを目的として、平成18年10月に道路運送法が改正され、「地域公共交通会議」が位置づけられた。

実情は交通事業者も自治体もゆとりがない

地域公共交通を担う交通事業者の実情をみると、その経営はゆとりがなく、採算の悪い路線から撤退し、事業のスリム化を図っている。欠損金補助の拡充を自治体に要請することで路線を維持しているが、補助を求められる自治体側の財政もゆとりがなく、じり貧状態。退出届出を受けて右往左往する。こんな自治体が多いのが実態であると思う。
ここには、自治体と交通事業者との間で、地域公共交通をどのように維持していくべきか、建設的な協議がなされていない。どちらも受け身であり、交通事業者の持つノウハウが活かされず、両者の役割分担が共有されていない問題が垣間見える。

活力ある住みよいまちづくりを行うために

やはり、地域公共交通がなければ、活力あるまちをつくることはできないと思う。
前述のように、このまま単にじり貧状態を迎えることなく、自治体と交通事業者との間で、適切な関係を築き、知恵を出し合い、その地域の実情にあった最適な地域公共交通サービスが提供される方向に転換しなければならないと思う。
その舞台として、地域公共交通会議を上手く活用することが求められている。
地域の実情・ニーズは千差万別であるため、それぞれの最適な地域公共交通の姿は異なるものの、地域にあった地域公共交通を、生み・育てていただきたいと切に思う。

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