今年1月に出された、政府・地域活性化統合本部(本部長・福田総理)による「都市と暮らしの発展プラン」では、地球環境温暖化対策関連で先進的な取り組みを行う全国10の自治体を「環境モデル都市」として選定し、各種の支援策を講じることとされている。今後、「環境先進都市」を自認する全国の自治体間で、今年6月(サミット前)の選定に向けた熾烈な競争が見込まれるところである。
この「環境モデル都市」の具体的な取り組みイメージは以下のようなものであるが、その内容は、新技術利用や施設・設備の入れ換えを行う「フロー指向」の対策にやや偏っているように見受けられる。
「環境モデル都市」の取り組みのイメージ例
(1)住宅・都市・交通・産業・生活様式等を含む総合的なモデル都市プランの策定
(低炭素のライフスタイル、コンパクトシティ、低炭素な交通システム、都市施設等の高効率化、
低炭素エネルギーの活用、「200年住宅」…)
(2)高度な環境技術の都市における活用等、モデル都市プランに基づく総合的な取組及びそのCO2排出削減効果の検証
(3)大学・企業等地域の知的インフラの活用
(4)地域の民間主体(市民、NPO、産業界等)と公的主体の横断的な連携 等
(地域活性化統合本部会合資料(平成20年1月29日)より)
今回の「環境モデル都市」の目標として、国内のみならず国外に対しても「日本」の環境に対するスタンスを明確にしながら、コベネフィット効果のある対策の先進例を示していこうというものがある。となれば、新たな都市開発等における環境技術導入を中心とするフロー指向のみならず、今ある都市施設や生活基盤の使い方に知恵を絞ることを重視したストック指向も重視すべきである。例えば、日本の生活様式や風習、伝統にといったものに焦点をあてながら、環境負荷低減を日常生活レベルで目指すストック指向の発想が考えられる。
すでに日本の歴史都市などには、四季折々の環境の変化に対応しながら100年以上も使われてきた木造家屋が多く残されており、こういった貴重な資源と培われてきた経験・知恵こそが、日本が世界に対して発信すべきものであろう。歴史都市にある町家の「通り庭」、「打ち水」の文化などは、温度、湿度など外部環境の変化の激しい日本において見出されてきた知恵であり、生活に密着した低炭素化対策でもある。
「200年住宅」はこれから新たに建設されるものである。しかし、長く使われることを標榜した「スケルトン・インフィル住宅」は未だ普及せず、20年前に最先端であったはずの建築設備機器もESCOの名目で入れ換えが進んでいるという現状があるように、新たな技術は必ず陳腐化するものであるし、その陳腐化のサイクルは確実に加速している。その意味で、現時点で最先端の環境負荷低減技術を導入したとしても、結果的には環境負荷を増大させてしまう可能性もあることを忘れてはならない。
もちろん、「もったいない」と、今あるものすべてを使い続けることが低炭素化社会に寄与するものではないが、環境モデル都市に手を挙げようとする自治体は、それぞれの都市の歴史的特性や蓄積されてきた風土をしっかりと認識した上で、その特性に応じた「フロー対策」と「ストック対策」とのバランスを模索していくことが求められている。
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