2巡目を迎えた指定管理者制度の今後のあり方

2008/11/10 太田 勝久
自治体
官民協働

指定管理者制度は、行財政改革の一環として平成15年の地方自治法の改正に伴い施行され、経過措置期間終了の18年までの3年間で全国一斉に導入されました。これは、公の施設の管理について、これまで地方公共団体の出資法人や公的団体等に限定されていたものを、民間企業等も含めて可能にしたものです。平成19年1月に総務省が実施した指定管理者制度の導入状況に関する調査によると全国で約6万施設に導入され、うち約2割の1万1千施設で民間企業等が指定管理者となりました。
そもそも当該制度導入の目的は、「施設管理主体を民間企業等に広く開放し、公的団体と同条件で参入することが出来るようにすること」で、具体的には「民間ノウハウの活用による低廉で良質なサービスの提供」、「公的団体の経営効率化」及び「選定手続きの透明化」などにあります。また、当該制度は管理者の指定が複数年可能となり、期間としては3~5年とする事例が多く見られます。
全国の自治体では上記目的の達成を目指し、当該制度が導入されたわけですが、制度導入から5年余りが経過し2巡目の管理者の指定時期を迎えた今、当該制度の課題についても少しずつ見えてきました。特に、短期間で管理者が頻繁に変わる可能性のある枠組みは当該制度の運用において様々な影響を及ぼし、住民に対して適切な公共サービスの提供が十分になされないことも懸念されるため、重要な課題であると認識しています。主な影響としては次の点があげられます。

○公共サービスの継続性が損なわれる可能性

  • サービス内容変更及びそれに伴う利用者減
  • 蓄積したノウハウの損失
  • 業務効率の低下(慣れるまで時間を要する等)

○不安定な雇用形態

  • 短期間の雇用(長期雇用が困難)
  • 従業員のモチベーションの低下(指定期間終了段階)

○円滑な業務引継ぎの実現性

  • サービス提供しながらの引継ぎ及び適切な引継ぎ期間の確保
  • 引継ぎ事項とノウハウの仕分け・線引き

これは、どの案件でも起こり得るものであり、解決しなければいけない事項です。これら課題を解決する方策としては、現管理者を次期管理者として継続できる仕組みを構築することが最も効果的であると考えます。ただし、現在はそのまま次期管理者として継続できる仕組みは制度化されていません。
一方、こうした仕組みの導入は、管理者指定の公平性の欠如や他法人等の参入機会の排除や、継続実施に伴う業務のマンネリ化・高コスト化などが指摘されるところであるため、制度化する際にはそれら指摘に対する回答及び制度設計の理由を明確にする必要があります。
その具体的な方法としては、行政が管理者に対して日常の業務内容を評価・検証するモニタリング制度に管理者としての継続性の是非を判断する仕組みを組み込むことが望ましいと考えます。こうした仕組みの導入は、管理者のモチベーションが持続すると共に、緊張感のある中での業務遂行となるためマンネリ化、高コスト化を防止することができると思います。なお、客観性及び透明性を確保するため、モニタリング方法は、あらかじめ管理者及び住民に対して公表するとともに、評価結果についても明らかにする必要があります。
指定管理者制度は、その当初導入段階で十分な制度的な検証が行われることなく、見切り発車的な面があったことは否めません。従って、制度導入が一巡した現在、各自治体の経験を踏まえた上で当該制度をあらためて見直す段階にあるといえます。今後は、本稿で取り上げた課題を含め、指定管理者制度の運用について議論が活性化し、よりよい制度へ洗練されることが待たれるところです。

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