~自治体「経営」の新展開~
地方分権が進展する中、地方自治体が自立するためには、国からの指示を待つのではなく、自ら目標を設定して、その達成に向けて取り組むことが必要である。そこで重要となるのが「評価」である。すなわち、事前に目標を設定し、事後にその達成度を評価し、その評価結果を次の計画に反映させることで、自律的かつ継続的な改善が可能となる。このような、民間で「PDCAサイクル」と呼ばれるマネジメントシステムを確立することで、国に決められたとおりに実行する「行政運営」から、自ら地域課題を見つけ解決策を実行する「行政経営」に転換することが、地方行政改革の柱の一つになっている。
三重県が平成8年に事務事業評価制度の運用を始めたのを皮切りに、各自治体で取り組みが広がっており、平成19年10月現在で、都道府県及び大都市ではほとんどすべての自治体で行政評価システムが導入されている。評価方法も精緻化され、自己評価だけでなく、第三者による外部評価を取り入れることで、評価の精度を高めている事例も増えつつある。
ところで、行政の取り組みをチェックする役割を担っているのが議会である。議会による「評価」がきちんと機能していれば、上記のようなマネジメントサイクルは、改めて確立する必要はない。逆にいえば、自治体に評価の仕組みを入れるというのは、議会の役割をないがしろにすることであり、議会の機能を否定することでもある。こうした理由から、議会における反対によって、行政評価システムが導入できないケースもある。最近では逆に、行政評価の結果を議会に報告・説明する形で活用するケースが増えている。
そういった意味では、議会によるチェック機能を高める方向で、行政評価の取り組みが進展しつつあり、望ましい方向といえる。ただし、本稿で取り上げたいのは、それでは「議会」の評価はどうするのか、という点である。もちろん、議員には4年の任期があり、選挙の洗礼を受けることが、最大の「評価」ではある。しかし、地方政治・行政の経営の改善に反映させようとすれば、毎年の議会・議員のパフォーマンスを評価し、その結果を反映させることも必要になろう。
こういった観点から、議会及び議員個人について、あらかじめ年度の目標を明示し、事後にその達成状況を自己評価し、評価結果を公開する野心的な取り組みが登場した(北海道福島町議会)。しかも、この福島町議会では、現在議会基本条例の策定に取り組んでいるところであり、その条例の中に議会・議員評価を書き込むことで、制度として確立することを目論んでいる。
地方分権の大きな障害の一つは、「地方に任せると危ない」という地方への不信である。国への絶対的な信頼は大きく揺らいでいるが、かといって地方に任せられるか、といえば、自信を持ってうなずける状況にはないのも実態であろう。なかば聖域化され、あまり触れられてこなかった地方議会に「評価」を導入し、地方の規律・自律性を高めることが求められる。
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