都市圏の時系列変化に関する試算

2009/03/16 田村 浩司
大都市圏
人口減少

都市化の進展に伴い、人々の日常的な活動範囲は拡大し、行政上の境界を越えた行動が営まれている。都市問題や地域問題を考える際には、行政界を越えた実質的なまとまり、「都市圏」単位で問題を捉えることが重要となる。
都市圏の定義には様々なものがあるが、ここでは「5%都市圏(※)」の定義に従い、平成17年及び平成12年国勢調査結果を用いた圏域を試算した。なお、平成12年から17年にかけては、多数の市町村合併が行なわれており、両年における圏域設定結果は単純に比較することが出来ない。また、平成17年国勢調査以降も市町村合併は進められている。そこで、平成12・17年国勢調査を平成20年4月現在の市町村構成に再編成し、両年の市町村構成をそろえた上で都市圏設定を行ない比較することとした。

中心都市の変化

平成12年設定では107あった中心都市は、平成17年設定では108となり、1の純減となる。増加・減少の内訳を細かく見ると、平成12年中心都市のうち5つが消滅する一方で、平成17年設定において6つが新規設定されている。いずれも各市の人口変動(総人口変化及び昼夜感人口比変化)が変化の要因となる。

郊外都市の変化

平成12年設定では1017あった郊外都市は、平成17年設定では1028となり、11の純増となる。変化の内訳を見ると、平成12年設定から22都市が郊外をはずれる一方、平成17年設定において33都市が郊外都市となっている。また、平成12・17両年において郊外都市となる995都市中28都市において、所属する都市圏が変化した。

中心都市による吸引力の変化

平成12年から17年にかけて所属する都市圏が変化しなかった967都市について、所属する都市圏人口(平成12年人口)の規模別に、通勤率の増減傾向を見ると、人口規模の小さな都市圏ほど、郊外都市における中心都市への通勤率が高まる傾向が見られた。特に都市圏人口20万人未満の都市圏では、96.7%の郊外都市において中心市への通勤率が高まっている。

人口増減率の比較

次に平成12年から平成17年にかけての人口増減率を比較する。なお、人口増減率の算出にあたっては、期初と期末の都市圏を一定にする必要があることから、ここでは平成17年都市圏設定結果を用いた。
平成12年から17年にかけて、日本の総人口は0.7%増加したが、都市圏に含まれない非都市部については-3.6%の減少となっており、非都市部では全国に先駆けて人口減少が始まっていたことが確認された。都市圏については1.1%増と全国を上回る増加率となっているが、中心都市・郊外都市別にみると、中心都市では1.3%の増加であることに対し、郊外都市では1.0%と若干ではあるが増加傾向が弱くなっていた。
都市圏人口(平成12年人口)の規模別に都市圏人口の増減傾向を見ると、人口規模の小さな都市圏ほど人口の減少する都市圏の割合が高まる傾向が見られた。
以上、平成12・17年国勢調査に基づく都市圏設定結果を用いて、平成12年から平成17年にかけての都市圏数の変化や人口動態について紹介した。両年における都市圏の設定結果には大きな変化は見られなかったが、中心都市の吸引力(言い換えれば、郊外都市における中心都市への依存度)および都市圏人口の動向は、都市圏人口規模によって大きな違いが見られ、都市圏内部における質的な変化が進行していることが伺われる。

図表1 郊外都市における中心都市への通勤率増減(平成12年から平成17年)

郊外都市における中心都市への通勤率増減

図表2 都市圏人口の増減(平成12年から平成17年)

都市圏人口の増減
(※)5%都市圏の設定について
「人口10万人以上かつ昼夜間人口比率が100%以上」の条件を満たす市町村を核都市として抽出し、「核都市への通勤者が全体への5%以上、または500人以上」である市町村を、当該各都市の周辺都市として設定した。なお、2つ以上の都市圏に含まれる市町村については、核都市への通勤者の多いほうの都市圏に含めている。

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