住民の生活の足はだれが守る?
住民の生活の足であるバス交通は、昭和45年頃をピークに減少の一途をたどっており、現在の輸送人員は、ピーク時の半分以下となっている。一方の自家用車に注目すると、昭和45年頃はバスの輸送人員よりも下回っていた状態から一変し、現在はバスの8倍強の輸送を担うなど、住民の生活の足は、「自家用車に頼った」状態となっている。
バス輸送を担っている民間の交通事業者にとってみれば、利用者が半減しては、いくら社会的意義があっても赤字の路線は維持し続けられない。大都市部を除いた多くの市町村において、民間の路線バスの廃止による公共交通空白問題を抱えることとなった。
高齢化の進展もあり、市町村としては自家用車を利用できない移動制約者を放置できないため、直接管理運営する「コミュニティバス」が急増するのはもっともな話で、公共交通を民間に委ねておけば許された時代から、市町村自らが主体的に対応しなければならない時代へと転換した。
地方分権・自由度を高める法整備
コミュニティバスに関係する法律の動きを見ると、道路運送法が平成14年と18年に改正され、また、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律が平成19年に施行された。こうした関連法の動きは、市町村が自ら主体的に対応できるようにバックアップしたもので、例えば、コミュニティバスの代名詞となった「ワンコイン(100円)」の料金設定などは典型的な話である。
地域公共交通という行政サービスを高めるために
市町村の自由度が高まったと言っても、まだまだ多くの課題を抱えている。
ワンコインの導入で潜在需要を新たに発掘しつつも運賃収入で事業性(収支)を確保している事例はごく僅かで、ほとんどが税金投入なしでは維持できない。また、住民の生活の行動範囲は広く市町村界を越えた行動は当たり前にもかかわらず、市町村が運営するコミュニティバスの多くは、行政界というしがらみから自分のまちだけで考えられたバスばかりで、隣接する市町村との接続までは配慮しきれていない。
利用者から見れば、生活の足は、コミュニティバスだけではなく、鉄軌道、民間路線バス、船舶等も対象であるものの、これら交通主体はバラバラで、一部の交通ビジョンを描いている市町村を除き、ほとんどが相互接続、ネットワークという概念が稀薄である。
住民に最も近い存在の市町村が力をつけ、地域公共交通ビジョンを描き、引き続きサービスレベルの向上を図っていくだけでなく、道路運送法で認めている複数市町村をまたいだ地域公共交通会議を設置するなどして、関係者相互の協議による、交通圏としての地域公共交通の確保が期待される。また、よりよい地域公共交通を守り育てるには、その事業目的に沿った評価と住民ニーズを反映した見直しが欠かせない。道路だけでなく、道路の上を走る地域公共交通も社会インフラの一環として充実させ、住民が住み続けられる暮らしやすいまちづくりが期待される。
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