本年5月11日のサーチ・ナウで『住民の生活の足「地域公共交通」を守り育てるために』というバス交通問題を掲載させていただいた。本編はその第二弾である。
最近の地域公共交通政策
国土交通省では、自治体が中心となって地域公共交通(バス)を守り育てるために、「地域公共交通づくりハンドブック」(H21.3:自動車交通局)、「コミュニティバスの事業評価の手引き」(H21.3:中部運輸局)などのマニュアル策定や補助メニューなどを創設し、活性化を促す取組を展開している。
そうした中で、最近では「モビリティ・マネジメント(MM)」という言葉があちこちで聞かれるようになった。MMとは、「ひとり一人のモビリティ(移動)が、社会的にも個人的にも望ましい方向に自発的に変化することを促す、コミュニケーションを中心とした交通政策」と定義される。過度な自動車利用から、公共交通や自転車等を適切に利用する、かしこくクルマを使い分けることを働きかける取組である。
住民に地域公共交通の利用を訴えかけるものの
自治体では、住民に対してさまざま媒体を通して、交通安全・渋滞緩和・環境貢献などをPRし、地域公共交通の利用を促すMMを展開している。しかしながら、こうしたソフト面でのアプローチだけでは、ハード面も伴わないと大きな成果が現れない場合がある。自動車と比べて、地域公共交通が魅力的な代替手段でなければ、なかなか人の行動は転換しない。高齢化が進展する中であっても、高齢者の免許保持率は低下せず、逆に事故件数は高まるばかりである。当該問題は、代替手段の選択肢が充実している都市部よりも地方部の方が顕著である。
地域公共交通政策の限界
公共交通を上手に整えている地域を考えてみると、シンガポールなどの海外では、中心市街地には限られた自動車しか流入できないように規制をかけ、中心地は自転車や歩いて移動する買い物客や観光客、住民にとって優しい魅力ある交通環境を整えている。
一方の日本の中心市街地では、商店街の買い物客を郊外の大規模店舗から呼び戻すために駐車場整備を進めている。週1回まとめ買いをする自動車ユーザーよりも、週に数回自転車やバスを使って商店街を利用する人の方がトータルの消費額は高いという話もある中で、自動車中心の駐車場整備が重要だとする対応を一部の地域で進めている。
都市計画では、生活機能を中心地に集約し歩いて暮らせるまちづくり「コンパクトシティ」の形成を進めているが、交通政策もまちづくりと連動した展開が求められる。
コミュニティバスを担当している市町村職員と接していると、担当するコミュニティバスを何とかしようという気持ちは見えるが、自分の地域のまちをどうしていきたいかということもあわせて考え、その上でバス交通施策を取り組んでいる人はまだ少ないと思う。
人口の流動化が加速すれば自ずと暮らしやすい地域が選ばれる。結果的に、人が集まらない地域は、ますます公共交通の利用者も減り、負のスパイラルに陥っていく。
幅広い視野を持って地域づくりを行っていくことが重要だと改めて思う。
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