公営競技の廃止は続くのか

2010/04/12 山本 将利
地域経済

2010年3月末をもって花月園競輪場(横浜市)での競輪開催が廃止された。経営が黒字にならないため地方財源確保の目的を達することができず、累積赤字が49億円に達して解消の見込みがないことによるものである。地方競馬では2002年から廃止と集約化が進んだが、競輪では2002年に西宮、甲子園、門司の3つの競輪場が廃止されて以来である。
自治体が経営している公営競技(競艇、競輪、地方競馬、オートレース)は、レジャーの多様化や日本経済の長引く低迷などにより、売上の減少傾向が続き、経営が悪化しているところも増えている。そのため、施設の老朽化に十分な対応ができず、新たな利用者を呼び込む魅力に欠けてしまい、さらに利用者が減少するという悪循環となっているところもある。
しかしながら、公営競技の開催は、地域の雇用を創出するだけでなく、取引による地域産業への波及もあることから、収入増加策と支出削減策を講じながら経営を維持している場合が多い。
花月園競輪の経営悪化の原因は、競輪場施設を民間企業が所有しているために売上の一定割合の賃貸がかかり自治体所有の競輪場に比べ経費がかかること、住宅地に立地していることや近隣に川崎競輪場があることなどから発売できる日数が限定されナイター開催も難しいことなどにより、売上を上げるための手段が限られていたことによると考えられる。
しかしながら、民間所有の公営競技場は首都圏にも地方にも存在しており、黒字経営をしている例もみられる。開催日程や時間の工夫、場外発売実施による発売日数の増加などについての取り組み、運営経費の見直しについてはどの主催者も行っている。
これらから考えると、首都圏にあり地域経済への影響が大きくないこと、そのために制約条件を打開する試みが長い間なされなかったことによるものではないかと考えられる。
なお、公営競技の経営を圧迫する要因は、主催者が独自で決められない経費の比率が高いことにある。関連産業振興や公益的活動のために売上の一定割合を交付金として振興団体へ納めることが定められていること、審判等業務への費用や選手賞金については各競技内で統一される場合が多いことなどがある。
経営改善のためには、主催者が独自で決められない経費比率を下げるなど制度を抜本的に見直して主催者の利益を確保できるようにすること、事業の利益をもって施設の老朽化に対応していくことができなければ、事業継続の見通しが立たない状況にある。
したがって、経営が悪化している公営競技場では、地域経済への影響が少ないとみられる大都市圏を中心に、廃止の動きが進むものと想定される。また、施設の老朽化対応への費用が捻出できない状況にある場合にも、廃止されることが考えられる。

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