「光の道」構想に地方が備えるべきこと

2010/09/28 萩原 達雄
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「光の道」構想 概要と地方の反応

総務省が進める「光の道」構想について、戦略大綱(案)が発表されている(平成22年8月31日)。「光の道」構想は、2015(平成27)年頃を目処に、超高速ブロードバンドの整備率を100%とし、日本のすべての世帯におけるブロードバンドサービス利用の実現を目標としている(詳細は参考資料を参照されたい)。この目標の実現にあたり、戦略大綱(案)では、「光の道」推進の3つの柱が示されているが、地方における影響が大きい項目としては、「第1の柱 『ICT利活用基盤』の整備加速化インセンティブの付与」が注目されよう。メディアによる報道では、「第2の柱 NTTの在り方を含めた競争ルールの見直し」が大きく取り上げられてきたが、未だ整備が進んでいない地域(主に条件不利とされる地域)においては、前者に対して関心を示す自治体関係者は少なくない。また、この戦略大綱案について、地方が担う役割が変わる可能性が含まれると指摘する関係者の声も筆者自身耳にしてきた。

ブロードバンド環境 整備から維持へ、地方に求められること

光ファイバに代表される高速ブロードバンド網の整備の経緯について、民間事業者の参入が困難な地域では、国(総務省等)による支援等を活用した基盤整備事業が進められてきた(注1)。こうした支援制度が、基盤の早期整備と地方の負担感の抑制に大きな成果をもたらしてきたことは言うまでもないだろう。また、整備された基盤設備の利活用や保守についても、国・自治体が主体的に関わり、情報格差の是正にあたり重要な役割を担ってきたと言えよう。しかし、こうした情報通信基盤の維持にあたっては、今後地方に求められてくる役割を的確に捉え、戦略的な対応策を検討すべきではないかと考える。
光ファイバ等の情報通信基盤設備の耐用年数は、一般に、施設内の通信機器類については5,6年程度、光ファイバケーブル自体では15~20年とされている。前述した、平成10年度以降に支援制度を活用して整備された光ファイバケーブルについても、通信機器類とあわせた更改が求められてくる。さらに、2015年という「光の道」構想の目標年次との整合にも配慮することが求められ、地方が取り組むべき課題の1つとしてあらためて整理・検討していくことが必要になると考える。
情報通信基盤に対する再投資への対応に、すでに直面し、あるいは近い将来の課題として気づき、その対応に向け検討を始めている自治体も少なくないであろう。そうした自治体関係者にとって「光の道」構想の針路は最大の関心事ではないだろうか。最終段階にある「光の道」構想の議論について、今後どのような展開がなされるのか、その動向に注目していくとともに、地方に求められる対応についても継続して考えていくことが求められよう。

参考情報

■総務省「光の道」戦略大綱
(URL) http://www.soumu.go.jp/main_content/000079745.pdf
■「光の道」構想実現に向けて-基本的方向性(概要)-
(URL) http://www.soumu.go.jp/main_content/000066357.pdf
■「光の道」構想実現に向けて-基本的方向性-
(URL) http://www.soumu.go.jp/main_content/000066358.pdf

(注1) 総務省では、2000(平成10)年度から「地域イントラネット基盤施設整備事業」を展開し、高速・超高速で接続する地域公共ネットワークの整備を支援してきた。2004(平成16)年度から始められた「加入者系光ファイバ網設備整備事業」は、過疎地域等の市町村を対象に地域情報交流基盤整備モデル事業として実施されてきた。また、2006(平成18)年度から始められた「地域情報通信基盤整備推進交付金」は、FTTH、ケーブルテレビなど地域間の情報格差是正に必要となる施設整備への支援を対象に、定住自立圏の取組を推進するための基盤整備等を積極的に支援されてきた(同事業は2010(平成22)年度も実施されている)。

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