循環型社会に向け注目されるリユース業界の動向

2010/10/14 加山 俊也
3R
廃棄物
資源循環

リサイクルからリデュース・リユースの推進へ

2000年に循環型社会形成推進基本法が制定され今年で10年目となるが、施策の柱となっているのは3Rに関連する取組みである。3Rは、法律によって優先順位が定められており、発生抑制Reduce(リデュース)、再使用Reuse(リユース)、再生利用Recycle(リサイクル)の順に進めるとされている。
これまで個別リサイクル法に関する施行・見直しが続いていたが、ここ数年、より優先すべきとされるリデュース・リユース(2R)に関する施策強化が進められようとしている。本稿では、リデュース・リユース(2R)のうち、特に中古品を取り扱うリユース業界の動向について報告する。

急激に拡大する中古品リユース市場

中古品市場については、商業統計で一部が確認できる。「中古品小売業(骨とう品除く)」(中古自動車、自転車、書籍は含まれない)の市場は、近年急激に拡大しており2002年から2007年までの5年間で年間商品販売額は約1.6倍に拡大している。どのような中古品が多いのかという統計は存在しないが、環境省調査(注1)によれば、中古品の市場規模(骨とう品、中古自動車は含まれない)は約1兆円、「衣類」、「パソコン・周辺機器」、「書籍」、「カー用品」などが上位と推計されている。
急激な拡大の背景にはいろいろな要因が考えられるが、1つは不景気の影響より安価に購入できる中古品の人気が高まっていること、もう1つは販路としてインターネットの活用が進んだという点が想定される。実際、環境省調査では、インターネット経由での購入金額と店頭での購入金額とほぼ同数という結果になっている。

消費者のニーズに対応する業界団体の自主的な取組の促進

中古品を購入した消費者へのアンケート調査結果からは「安い価格で購入できるから」との理由が最も高く、一方、購入したくない理由からは「保証・サポート体制に不安がある」「すぐに故障しそう」、「中古品は他の人が使用したものだからあまり使いたくない」「汚れや臭いなどが気になる」といった理由が挙げられている。
これら課題に対しては、リユース業界団体における自主的な取組の推進が期待されている。リユースショップに関係する業界団体、ジャパン・リサイクル・アソシエーション(JRCA)、日本リユース機構(JRO)、日本リユース業協会(JRAA)といった団体があり、会員企業にリユース品に一定期間の保証を付ける、といった取組を進めている(注2)。

中古品市場と新品市場の連携の動き

中古品市場が新品製造を阻害するのではという懸念も心配されているが、一方で、新品のマーケットが存在しないと中古品として売るもの(仕入れ)が確保されないため、共存している市場との指摘もある。昨今、大手の新刊書店が中古本市場に参入するほか、家電量販店が中古携帯などのリユース事業に取り組むなど、新品のみを使っていた事業者が中古品も合わせて取り扱うといった動きが多くなっている。

今後注目が高まるリユース業界

中古品は循環型社会形成に向けたリユースの取組促進という施策動向を踏まえて、より注目が集まることが予想される。個人消費のみならず、企業活動においても、これまでの新品で調達していたものがリユース品になる、また不用品の処理・引渡の方法に廃棄物処理・リサイクルではなく、「リユース」という手段がより注目されていくことが考えられる。

参考文献
注1:環境省「平成21年度 電気電子機器等の流通・処理実態調査及びリユース促進事業」
注2:例えば、田崎智宏・吉田綾「電気電子製品のリユースの現状と課題」エネルギー・資源 Vol.31 No.5(2010)など

図表 中古品小売業(骨とう品を除く)における事業所数・販売額の推移

中古品小売業(骨とう品を除く)における事業所数・販売額の推移

※中古自動車、自転車、書籍は含まれない 出典)経済産業省「商業統計」より作成

図表 品目別リユース市場の規模(推計値)(億円)

品目別リユース市場の規模(推計値)(億円)

※骨とう品、中古自動車は除く。「その他」には、スポーツ用品、楽器、CD、ゲームソフト、その他の生活雑貨などが含まれる。 出典)環境省「平成21年度 電気電子機器等の流通・処理実態調査及びリユース促進事業」

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