災害時の情報伝達方策検討のアプローチ

2011/04/28 白藤 薫
災害
防災
ガバナンス・リスク・コンプライアンス

地震と津波によって戦後最大の被害がもたらされた東日本大震災。今回の震災で、正確な情報を迅速に提供することが必要なことがあらためて確認された。各地域においては、地理/地形等の状況や住環境などに応じて、災害に対応した住民への情報伝達方法を検討しておくことが求められる。
ここでは、住民への情報伝達方法を検討する際の視点として、「時間軸」「災害種別」「メディア特性」の3点を提示する。

(1)時間軸

災害時における情報提供の緊急性やその情報内容は、災害発生前、被災時、被災後(復旧時)でかわってくる。被災時には避難指示/勧告といった緊急性のある情報を伝達する必要があり、迅速性が最優先で、簡潔なメッセージを伝える。それに対して被災後は、緊急性は相対的に低くなるが、避難場所、被災状況など地域に応じたきめ細かな情報を伝達する必要があり、地図など扱う情報量も多くなる。

時間軸

(2)災害種別

想定される災害種別によって、情報伝達エリアの広さ、求められる情報伝達時間などがかわってくる。台風などは被災範囲が広いため、情報伝達する対象エリアも市町村を超えるような広い範囲となる。一方、局所的なゲリラ豪雨であれば市町村よりも小さい範囲になることも考えられる。また、津波の避難指示などでは緊急性が求められるため、情報伝達の時間を短かくする必要がある。

(3)メディア特性

時間軸や災害種別から、エリアの広さ、情報伝達時間、情報量(テキスト/画像)など情報伝達にあたってメディアに求められる要件がかわってくる。これらに加えて、地域での普及度合い、Push型/Pull型といったメディアの特性を考慮する必要がある。
多くの市町村で導入されている同報型防災無線は、Push型メディアで避難指示など緊急性を要する情報伝達に適している。一方、インターネットは、動画を含めた様々な情報を地域に応じてきめ細かく提供することも可能であるが、Pull型のメディアであり緊急性を要する情報伝達には適していない。(下図参照)

メディア特性 具体的なメディア利用方策は、各地域で想定される災害、整備されている情報通信インフラ等にもとづいて検討していく必要があるが、緊急性の高い地震発生や避難指示を伝えるため、災害に注意を向けるトリガーとしての伝達方策(携帯電話セル・ブロードキャストシステム(注1)、自動告知FMラジオ(注2)などPush型メディア)と、被災後に被災状況や避難場所などを分かりやすく伝える情報伝達方策(インターネットなどPull型メディア)の両者を組み合わせてデザインしていくことが考えられよう。また、住民のリテラシーや様々なシチュエーションに対応するため複数のメディアを活用する(ワンソース・マルチユース)ことも必要になってこよう。

(注1)あるエリアの携帯電話に文字情報を一斉配信するサービスで、緊急地震速報で利用されている。
(注2)電源がオフになっていても、コミュニティFM局からの電波を受信して、自動的に電源が入るシステム。

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