港湾法改正による今後の港湾運営のあり方

2011/07/26 岩田 雄三
港湾

平成23年3月の港湾法及び特定外貿埠頭の管理運営に関する法律改正により、港湾の種類(港格)が見直され、新たに港湾運営会社制度が創設された。港湾の国際競争力の強化を目的として、国際コンテナ戦略港湾、国際バルク戦略港湾及び日本海側拠点港湾の選定・整備、港湾法等の改正など、港湾における「選択と集中」、「民の視点による経営」が加速している。

港格の見直し

港湾法上の港格として、新たに「国際戦略港湾」を位置づけるとともに、特定重要港湾の名称が「国際拠点港湾」に改められた。国際戦略港湾については国際コンテナ戦略港湾に選定された阪神港及び京浜港(5港)が、国際拠点港湾については現行の重要港湾のうち国際戦略港湾を除く港湾(18港)が位置づけられた。

港湾運営の民営化

国際戦略港湾及び国際拠点港湾において、コンテナ埠頭等を一体的に運営する株式会社が港湾運営会社として指定される。港湾運営会社は、国や港湾管理者の行政財産の貸付けを受け、ターミナル等の料金決定権を確保した上で、荷主・船社への営業活動など港湾運営に関する業務を一元的に担うことになる。
また、平成23年5月に選定のあった国際バルク戦略港湾についても、埠頭運営会社において、民の視点による効率的なターミナル運営が求められる。当面、官民の連携のもと、航路・泊地、コンビナート用地、桟橋、荷役機械等の拠点整備、かかる資金調達、企業誘致等が進められる。

東アジアにおける経済発展等を背景として、日本発着の欧米基幹航路が減少するなど、日本の港湾の相対的な地位が低下しており、日本の産業活動の維持発展のために、寄港回数の回復は喫緊の課題である。選択と集中、民の視点による経営により、早急にサービス水準の向上と、効率化・低コスト化により国際競争力の強化を図る必要がある。
港湾法等の改正において、国際戦略港湾及び国際拠点港湾を主な対象として、直轄港湾工事の国費負担率の引き上げ及び対象施設の拡充、無利子貸付制度の港湾運営会社への拡充など、港格による選択が行われた。一方で、重要港湾及び地方港湾についても、国民生活や産業活動を支える重要な社会資本であるとともに、内航船による低コスト化など国際競争力強化における地方港の果たす役割も大きい。港湾管理者は、地方港の地域経済や地理的特徴を踏まえ輸送システムの拡充など、広域連携を意識した港湾経営の将来像を描くことが重要である。
今回、港湾運営会社制度が創設されたが、港湾に限らず公共経営において株式会社の参入など民の視点による経営が導入されている。国際バルク戦略港湾については、従来の特定埠頭運営事業、指定管理者制度のほか、コンセッション方式といった株式会社等による民活型事業手法がその候補となる。株式会社はゴーイング・コンサーン(継続企業)であることが前提であるが、社会資本においては、より継続性・安定性が求められ、十分な経営基盤のもと、公共性を主眼としたガバナンスを確保する必要がある。

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