リサイクルからリデュース・リユースの推進へ
2000年に循環型社会形成推進基本法が制定され11年が経過した。施策の柱となっているのは3Rの取組みである。3Rは、法律によって優先順位が定められており、環境負荷の発生抑制Reduce(リデュース)、再使用Reuse(リユース)、再生利用Recycle(リサイクル)の順に進めるとされている。
これまで個別リサイクル法に関する施行・見直しが続いていたが、ここ数年、より優先すべきとされるリデュース・リユース(2R)に関する施策強化が進められようとしている。本稿では、リデュース・リユース(2R)のうち、ガラスびんリユースの動向について報告する。
ガラスびんのリユースとは
ガラスびんは、主に飲料・酒類、食品・調味料など多用途に用いられ、他の容器と比較して、中身の品質保持性能に優れる容器である。一度使用したガラスびん(空きびん)を、回収、洗浄、検査を行い、再度中身メーカーにおいて充填・市場に供する一連の仕組みをびんリユース(またはびんリユースシステム)と呼び、身近な例としては、ビールびん、一升びん、牛乳びん(宅配や学校給食)などが挙げられる。
現状では、業務用市場や宅配市場など、空きびんの回収が比較的容易なクローズドな用途において存続しているが、全体としては減少傾向にある。(下図参照)
なぜ、ガラスびんのリユースが必要とされるか?
飲料・食品などに使用する容器には、PETボトル、スチール缶、アルミ缶、紙パックなど多種多様なものがあり、それぞれの容器に良い面・好ましくない面が存在しているが、ガラスびんの最大の特徴は、現時点ではリユースできる唯一の容器という点にある(注1)。
資源の有効利用、廃棄物の削減という観点ではリユースが望ましく、長期的な視点では、資源価格高騰の可能性、廃棄物最終処分場の逼迫といった課題に対応する意味でびんリユースは重要性を増してくると考えられる。また、温室効果ガス排出量という観点でも、一定の条件(注2)がそろえばガラスびんのリユースが最も望ましいとされている。
びんリユース推進に向けた新たな動き
(消費者・需要者からの働きかけ)
従来、びんリユースは中身メーカーが主導し、卸・小売業、びん商との役割分担・連携により進められてきたが、近年の大きな特徴として、消費者・需要者からの働きかけから取組みが進められようとしている。
その1つが、料飲店・業務店発のリユースの取組みである。大手居酒屋チェーンのワタミ株式会社では、プライベートブランド商品「わたみ日本酒」などのリユースを開始した。この取組は、他の料飲店・業務店等でも実施できる可能性が高く、今後の取組み拡大が期待されている。
(びんリユース推進全国協議会の設立)
びんリユース推進全国協議会が2011年10月に組織された。これは、びんリユースを推進する幹事9団体を中心とした協議会であり、1)各地域で進められるびんリユース普及に向けた取組を支援・新規構築し、2)びんリユースの将来像の共有とその実現に向けた「中長期的なロードマップ」を作成、3)びんリユースの普及に向けた、関係主体との連携促進、広報活動・情報発信の実施、を進める。
これまでびんリユースを推進しようとする団体は個々に存在していたが、消費者・需要者を含めて、一堂に会した組織が設立されたことで、今後のびんリユース促進に向けた取組が加速的に進められると期待・評価される。
(「我が国におけるびんリユースシステムの在り方に関する検討会」での議論)
環境省において「我が国におけるびんリユースシステムの在り方に関する検討会」を開催、全国4地域における実証事業の実施、びんリユースシステムの成功事例集の作成・公表に加え、我が国におけるびんリユースシステムの在り方に関する取りまとめが行われ、現状を踏まえた当面推進すべき取組とともに、中長期的に目指すべき方向性について整理された。
今後の検討課題も残されてはいるが、びんリユースの在り方、目指すべき方向性について総括的にまとめられたことは大きな意味を持っており、今後、新たにびんリユースを進めようとする主体にとって環境が整い始めたといえる。
今後注目が高まる新たなガラスびんのリユースシステム
ガラスびんの製造・使用・廃棄に関連する法律として容器包装リサイクル法(1995年6月制定)がある。同法では、消費者が分別排出、市町村が分別収集、事業者がリサイクルするという3者の役割分担を定め、3者が一体となって容器包装廃棄物の削減に取り組むことを義務づけている。
2013年4月を目処に容器包装リサイクル法の見直しが予定されており、その中で検討される1つの大きなテーマとして、リユースの位置づけ・見直しという点があげられる。
現存するびんリユースシステムの基盤を維持強化するとともに、新たな仕組みのびんリユースシステムを構築するための取組が必要であることは、多くの関係者間で合意されており、容器包装リサイクル法の動向とともに、今後の動向が注視される。
(注1)海外ではPETボトルのリユース事例がある。国内においては、調査研究・実証実験等は実施されているが、商品としては販売されていない。
(注2)ここで一定の条件とは、回収・輸送時の効率化などが挙げられる。例えば、特定地域内で循環する、商品輸送の戻り便をびん回収に効率的に利用するなどが求められる。
参考文献・URL
1.環境省「我が国におけるびんリユースシステムの在り方に関する検討会」(外部サイト)
2.びんリユース推進全国協議会(外部サイト)
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