公共サービスの再構築は「まったなし」
人口減少時代、少子高齢時代に突入し、自治体は従前の右肩上がりを前提とした公共サービスを見直し、新たな考え方・仕組みの下で(従来サービスの廃止も含めて)、持続可能な公共サービスを提供していくことが求められています。特に、施設整備から一定の年月が経ち、老朽化が進み、大規模な施設更新を伴う公共サービスの再構築が急務となっている自治体から多くの相談をお受けしています。
今回は、そのなかでも「公設卸売市場の改革」にフォーカスして、持続可能な公共サービスの展開に触れたいと思います。
持続可能な公設卸売市場のあり方に関する「6つの戦略課題」
公設卸売市場を有する自治体にとって、その改革の必要性が顕在化する入り口は様々ですが、公設卸売市場が抱える戦略課題として大きく6つを挙げることができます(下図参照)。これらの6つの課題はそれぞれが密接に関係しており、持続可能な公設卸売市場のあり方を考える上での全体的な構造として捉えなければなりません。
多くの公設卸売市場は、これまで担ってきた役割・機能と、現在の市場を取り巻く事業環境から求められるものが大きく乖離してきている状況にあります。農林水産省の卸売市場の整備方針にも色濃く方向付けされてきているように、今後の施設設備の補助金等も厳しい選択と集中が進むことが想定されるなか、自らの市場の新たな役割・機能を明確にして、より自立した市場運営を志向しながら、市場全体の経営力を高めていくことが最も重要な要素となります。そのためには、開設者・運営者が一体となって、市場全体の新しいビジョンと具体的な行動内容を共有し、官民協働の下でPDCAを機能させていく仕組みを備えなければなりません。その上で、市場運営に必要な施設整備を合理的に進めていくことになります。
深遠なる”しがらみ”を紐解き、市場関係者の「新たな関係性」を築く
市場全体の経営力を高めていく取組を検討・実行する際に障壁となるのが、様々な”しがらみ”です。現在の卸売市場のビジネスモデルには、戦後長い年月をかけて確立されてきており、市場環境が変わったからといって、なかなかすぐに変えられない地域の実情が複雑に絡み合う”しがらみ”が存在しています。卸売会社や場内事業者単体の企業体質や組織風土、卸売会社と仲卸・買参人などの場内の関係性、産地と市場の関係性、小売・消費者と市場の関係性、ひいては、開設者と運営会社・関連会社の関係性など…。市場全体の経営力を高めていくためには、これらの深遠なる”しがらみ”と向き合い、丁寧に紐解き、市場運営に携わる関係者の新たな関係性を築いて、将来に向けた新たな一歩を実際に踏み出していかなければ、絵は描いたものの、結局実行が伴わない、旧態依然の市場運営にとどまってしまいます。
深遠なる”しがらみ”を超越する「意思・覚悟」と「共創関係のデザイン」
このような深遠なる”しがらみ”を超越するためには、場内事業者キーマン及び開設者(自治体)の「意思・覚悟」を再認識・つなぎ合わせていくことがまず重要で、これらを核として、可能な限り透明性の高い(公開された)状態で、有志・賛同者の新たなコミュニティを形成し、拡げていかなければなりません。このような「意思・覚悟」から「共創関係」に拡げていくためのコミュニケーションや合意形成の場のデザインと、それらを粘り強くファシリテート、コーディネートしていくことが不可欠で、そこには正解も事例も近道もありません。市場関係者が客観性を持って自らに向き合い、市場関係者同士が従来の枠組みを越えて響き合うような状況を辛抱強くつくり上げていく、この一連のプロセスこそ、持続可能な公設卸売市場への改革を実現するための本質的な「鍵」なのです。
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