平成23年社会福祉施設等調査によると、全国の社会福祉施設等の施設数は50,129 施設となっている。そのうち、障害者関連施設は1割強を占めている。
社会福祉施設の老朽化や建て替えの進行状況が把握できる調査等は、全国を対象とするものでは定期的に実施されていないが、昭和45年の中央社会福祉審議会の提言では、『民間の老朽施設に対しては、整備費につき、年次計画により、特別の助成措置を講じ計画的に建替えを促進してきたが、なお建替え需要は極めて強い。一方、公立の老朽施設の建替えに関しては特別の措置が講じられていないために、老朽化が著しい。』という内容が盛り込まれている。私も、命を預かる意味合いを持つ福祉施設での設備不良や未整備、防火・耐震対策不足等の社会的課題は大きいと考える。
それでは、その後着実に更新が進められてきたのだろうか。
東京都社会福祉協議会では、地域福祉推進のために重点的に取り組むべき事項に関する提言を『地域福祉推進に関する提言2012』(平成24年6月)として取りまとめており、その中で、『提言Ⅱ 老朽化した社会福祉施設の建て替え問題に関する提言』を行っている。それによると『東京都内では、建築後30 年を超える老朽化した社会福祉施設が数多く存在している。また、昭和56 年の建築基準法新耐震基準に適合しない建物も多く存在している。』と認識を示している。
民間施設の建て替え等更新が進んでいないその背景に、措置制度の存在が大きいと言わざるを得ない。措置制度下では、社会福祉法人は、公に求められる社会的サービスを公共の代わりに提供するという使命の中で、一定のサービス水準を確保・提供できれば、行政から利用者を紹介され、措置費として公的資金が投入されるため、経営という観点をもたない法人が多かった。このため、施設の建て替え等の資金を確保することが困難な社会福祉法人の多い状況が生まれ、建て替え等が進んでいない結果につながっている。
当社では、自主研究として全国の都道府県、政令市、中核市において、障害者福祉施設の建て替え等をどのように進めているのか、課題が何か、について調査を行った。その結果では、この10年間のうちに公民含めて建て替え等を実施した事例がある自治体が半数程度であった。
障害者施設の更新実績があるという自治体から、具体的な施設名などの更新実績の内容を聞いたところ、84件の回答が寄せられた。その大部分は、各自治体が所管する障害者施設のうち、社会福祉法人など民間設置の施設が、民間負担により更新を行ったもの、または公的補助金などを活用して更新を行ったものである。更新の内容としては、「建て替え」が35.7%、「改修・改築」が54.8%となっている。
また、建て替えの理由も、「老朽化」をあげるところがほとんどであった。それ以外では、「法令等の変化に則った新たな施設種の確保のため」「機能を高度化して専門性を高めるため」といった回答も2割程度見られる。
自治体の課題認識や対応策の提案については次回〔パート2〕に記載する。
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