コロナ禍における大企業によるスタートアップ支援の重要性

2020/05/21 黒瀬 剛史
スタートアップ
新規事業
経営戦略

新型コロナウイルスの影響がすさまじい。連日のように、国内外の社会・経済への影響が取りざたされており、これまで着実に発展してきた大企業とスタートアップとの協業にも影響があるかもしれない。しかし、いずれかのタイミングで、新型コロナウイルスが引き起こす事態は収束していく。そのような中、大企業の取りえる選択について議論したい。

コロナ禍で起業家は増える!?

欧米の研究者によると、失業率と開業率には正の相関関係があると言われている1。不況になって、職を失った人々が新たな収入源を求めて起業するというのがその背景にあると指摘されている。新型コロナウイルスにより、欧米でも社会・経済への甚大な影響を与えていると考えられる。この状況を受けて、起業家が生まれてくる可能性が大いにある。
このような流れを予見し、エコシステム全体でそのような起業家を支援していこうと啓発する動きがある2。もちろん失業率が高くなる中で雇用を創出するという考え方もある。しかし、むしろスタートアップが増えてくることが見込まれる中、欧米で、post-COVID-19の世界をリードする製品やサービスが生まれる可能性にかけているということもあるだろう。

post-COVID-19の経済を見据え、スタートアップを支援する

近未来であるはずのことであるにもかかわらず、post-COVID-19の世界観を明確に描くことは難しい。しかし、これまでのワークスタイル・ライフスタイルに大きな変革が訪れることは想像に難くない。実際、この変革を見越してか、すでに新型コロナウイルスの後にトレンドとなるような分野に対する大型のシードファンドも組成されている3
コロナ禍なればこその起業家支援をするというムーブメントが欧米を中心にさらに活性化されることは十二分にある。そして、post-COVID-19の世界で求められる価値を持ちえた企業が新しい世界で存在感を発揮することになる。今こそ、日本においても、スタートアップと大企業の協業を促進していくことが将来の日本、そして世界の経済をけん引していくことにつながる。

スタートアップとの協業手段としてのアクセラレーターを活用する

大企業によるベンチャー支援の代表格ともいえるのがCVCであったが、プレ・シードあるいはシード期のスタートアップも支援するという観点からは、これまでとは違った支援の在り方を考える必要がある。一般的に、CVCが比較的成長したスタートアップを支援するうえで有効な機能である一方、アクセラレーターは、プレ・シードあるいはシード期のスタートアップを支援する機能である。新たな起業家の誕生が見込まれる中、アクセラレーターの価値がさらに高まってくると考えられる。
こうした中、玉石混交のスタートアップの中で原石を発見・研磨するのは、企業にとって高い目利き力と粘り強い支援が求められる。しかし、post-COVID-19で次代を担う企業になっていくためには必要な投資であると考えられる。弊社でも次代を担うスタートアップを発掘するためのアクセラレーションプログラム「LEAP OVER」を本年度も実施する予定である。企業や自治体とともにスタートアップを支援し、持続可能な社会の実現を目指す取組で、今期は4期に該当する。これまでもpost-COVID-19で求められる価値を社会に提供するスタートアップを支援してきたと考えている。今期も、社会に求められるスタートアップを支援していきたい。


1 Spigel, B., 2020. Imagining Entrepreneurial Ecosystems In A Post-Covid World. [online] Available at: https://www.linkedin.com/pulse/imagining-entrepreneurial-ecosystems-post-covid-world-ben-spigel/[Accessed 1 May 2020].

2 Spigel (2020)

3 Partech. 2020. Partech Looks Ahead With Third Global Seed Fund Of $100M. [online] Available at: https://partechpartners.com/news/partech-looks-ahead-with-third-global-seed-fund-of-100m/?filter=companies-news& [Accessed 1 May 2020].

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