各地で様々な地方創生の取り組みが行われている。7月末に大阪で行われた移住イベントにも多くの自治体が出展し、にぎわう来場者に対して熱のこもったPRをしていた。地方創生の取組指針となる「地方版総合戦略」が策定されて3年目の今年は計画期間の折り返しの中間年度にあたる。KPIの進捗も気になるところであるが、この2年間のトライ&エラーから学び、次の一手の精度を高めていく力は高まってきているだろうか。地域の課題と向き合い、解決策を創出し、実行体制(仲間)を確保するといったことが積み上がってきていなければ、色々と苦労したが、実は2年前から一歩も進んでいないということになりかねない。
地方創生を進めていくに当たっては、様々な主体との連携・協働が重要である。策定にあたっても「産官学金労言」がキーワードとなり、そこで育まれたネットワークが成果を生み出している事例もあるだろう。
こういった連携・協働をすすめていくため「オープンガバナンス」という考え方を活用して取り組んでいる自治体がある。例えば、宇部市では、市ホームページにおいて「オープンガバナンスとは、市民と自治体がオープンな姿勢で協働しながら地域の課題に取り組んでいく社会の仕組みです。本市は、誰もが公共のデータを自由に利用することで、市政への関心、まちづくりへの参画が促進され、地域課題の解決、市民生活の向上へつながると考え、市民がオープンデータを活用して、自治体と協働しながら地域の課題解決を進めていくオープンガバナンスに取り組んでいます。」とし、一つの取組として、東京大学公共政策大学院が主催している「チャレンジ!!オープンガバナンス」に参加している。
この取組は「データを活用し、地域課題を解決するコンテスト」とされ、地方自治体が提示した地域課題に対して、市民や学生が解決策を提案するものである。応募自治体には、①地域課題と関連データを提供すること、②提案を検討している市民や学生とコミュニケーションをとること、が求められている。昨年度は31の自治体が応募し、うち28の自治体が延べ68の提案を受けた。応募課題の中には地域プロモーション、観光など地方創生に関連するものもみられる。コンテストの後、提案の実現に向けての取り組みを具体化させている自治体もあるようである。
2017年度のコンテストについては、参加自治体が8月31日まで募集されている。地域の内外に地方創生に向けて貢献したい、アイデアを試したい人々は多数いる。こういった機会を活用し、新たな知恵や仲間を増やしてみてはどうだろうか。
2016年度の応募テーマの事例
応募自治体 | 応募課題 | 分野 |
---|---|---|
室蘭市 | 室蘭に新たな観光客を呼び込むためのアイデア | 観光 |
松戸市 | 外国人市民と日本人市民の多文化共生の促進 | まちづくり・交通 |
東京都中野区 | 家庭養護の推進 | 子育て・家族・教育 |
神奈川県 | 地域住民の安全安心のため、防犯パトロールや通学路の見守りなど日々活動をしている自主防犯活動団体(自治会、町内会等)に、学生や現役世代ができること | 防災・防犯 |
横浜市 | シビックプライドの醸成 | 地域プロモーション |
川崎市宮前区 | 地域全体で子育てを応援するまちづくり | 子育て・家族・教育 |
新潟市 | データ活用による新潟市の魅力発信のパワーアップ | 地域プロモーション |
牧之原市 | 片浜小学校の新しい利活用のための仕組みづくり | まちづくり・交通 |
近江八幡市 | 近江八幡市のPR戦略について | 地域プロモーション |
神戸市 | 震災画像オープンデータとアプリを活用した減災教育の伝承 | 防災・防犯 |
生駒市 | 市の認知度向上策・交流人口増加策の検討 | 防災・防犯 |
宇部市 | わかりやすい健康情報の提供による市民が主体の健康づくり | 高齢化・介護・医療・健康 |
福岡市 | 福岡市商店街の振興 | 産業振興(一次、二次、三次) |
(資料)「チャレンジ!!オープンガバナンス2016(COG2016)」ホームページ
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