多彩な誘致効果を継続的にもたらすMICEレガシーMICEの裾野拡大に向けた「ユニークベニュー」の再定義(2)
前稿(第1部)では、わが国における国際MICEの市場規模は年々拡大し、開催地域に対して莫大な経済効果を生み出すことを整理した。本稿(第2部)では、MICEの誘致・開催による効果は、経済効果のみではない幅広いものとなっていることを紹介する。
1.MICEの誘致・開催に伴う効果体系
MICEの誘致・開催に伴う効果としては、これまで述べてきた経済効果に加え、開催される会議等の主題に直結する分野を中心とした産業面や学術面での幅広い成果、そして社会基盤と生活基盤の充実や地域産業の活性化、知名度やイメージの向上なども含めた中長期的な幅広い効果(MICEレガシー1)が得られるとされる。
図表 MICEの誘致・開催に伴う効果の体系と種類
資料)観光庁「平成30年度MICEによるレガシー効果等調査事業」(平成31年3月)
2.MICEレガシー
観光庁では、MICEレガシーとその効果を下図の18項目に整理しており、非常に幅広い範囲でその効果を享受できるとしている。一方で、レガシー(過去に築かれて現在の残された遺産、または現在から将来に受け継ぐべき遺産)というだけに、経済効果と比しても、中長期的、継続的に得られることが想定されている効果が多い。
図表 MICEレガシーの分類と効果の概要
資料)観光庁「平成30年度MICEによるレガシー効果等調査事業」(平成31年3月)
この点、わが国が、主として誘致に取り組んでいる大規模な国際MICEであれば、これらのレガシー効果も大きく、かつ広域で長期間にわたって効果が及ぶものもあるだろうが、本稿の主たる関心となる地域への誘致の場合は、小規模、零細なMICEが中心と考えられ、レガシー効果の実感が乏しいものになりがちである。しかし、期待される効果の範囲や規模、時間軸等が変わるだけで、効果の構造は同一であることから、小規模、零細なMICEであっても、これらの効果を享受できることには留意が必要である。そのためには、実績を積み上げていくことで、最終的には実感できる効果に到達していけるように取り組むことが求められる。
1 MICEが開催されることによって、長期にわたって生じる社会的効果。レガシー効果のなかでも、オリンピック開催に伴うオリンピック・レガシーが代表的なものとして知られている。
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