○メキシコは、非アジア地域の中で、ブラジル、ロシアに次いで日本企業の関心の高い有望な新興経済大国である。中南米の新興経済国の中でも、ブラジルやアルゼンチンの景気が急減速しているのと対照的に、メキシコは、足元で年率4%前後の経済成長率を維持しており、堅調な動きを示している。
○メキシコの個人消費は、米国在住出稼ぎメキシコ人労働者からの送金に下支えされて底堅く推移してきたが、送金の大幅拡大が見込めず国内雇用所得環境も好転していないため、伸び率が鈍化する兆しが見える。一方、投資については、メキシコへの企業の生産拠点新設が増加していることなどを受けて拡大が続いており、先行きに対する企業のセンチメントも比較的良好である。
○メキシコの経済運営の特徴のひとつは、財政規律が維持されていることである。メキシコの財政赤字および公的債務残高の対GDP比率は、EUにおけるユーロ導入時のマーストリヒト基準にも適合するほど良好である。ただ、メキシコの政府歳入の3割を占める石油関連収入は、原油生産量低下のため減少が予想されており、それが今後の財政に与える影響が危惧されている。
○メキシコの経常収支は赤字であるが、それを上回る資本収支の黒字によってファイナンスされており、外貨準備は増加している。資本収支黒字の主因は、外国投資家によるメキシコ国債購入増加である。外国投資家のメキシコ国債購入増加の背景には、メキシコの堅実なマクロ経済運営への信認や、IMFと米FRBがメキシコに提供した大規模なセーフティーネットの存在がある。
○メキシコの輸出の7割が米国向けだが、米国市場において、メキシコ製品は、自動車部品や薄型TV以外では、中国との競争にさらされ劣勢に立たされている。ただ、中国の人件費が上昇し為替相場も人民元高となっているため、メキシコの中国に対する競争力は足元でやや回復している。
○メキシコの弱みは、法制面の問題に起因する産業競争力の弱さであり、メキシコの経済成長率が他の新興国ほど高くならない主な原因もそこにあると考えられる。メキシコの今後の課題は、規制緩和等を軸に国際競争力向上を図ることである。
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