○2012年12月5日、欧州連合(EU)のファンロンパイ大統領が『真の経済通貨統合に向けた最終報告書(以下『ファンロンパイ・レポート』とする。)』を発表した。このレポートには、欧州が長らく苛まれ続けている債務問題やそれに伴う金融不安の解決・収束に向けた作業工程表が示されており、先行きのEU経済が目指すべき構造改革の方向性が描かれている。言い換えれば、この取り組みが順調に達成されていくかどうかが、今後の欧州債務問題の行方や統一通貨ユーロの存続を左右するといっても過言ではないだろう。
○『ファンロンパイ・レポート』は先行きのEU経済の改革スケジュールを(1)第一段階(~2013年)、(2)第二段階(2013~14年)、(3)第三段階(2015年~)の3つに別けている。そのうち最も具体的な内容となっているのが第一段階であり、その中でも銀行行政の一元化が以降の経済改革の「礎」を成している。したがって、銀行行政の一元化に向けた取り組みが後ズレすることは、その先にある経済・財政統合への道のりが遠くなることを意味しており、延いてはEU経済の脆弱性の改善自体が滞ってしまうことになる。こうしたことから、特に2013年前半に集中する銀行同盟に関連した取り組みが順調に行くかどうかが、欧州債務問題の先行きを占う試金石になると考えられる。
○『ファンロンパイ・レポート』で銀行行政の一元化に向けたスケジュールが明示されたことは、債務問題の収束に向けた大きな前進であると評価できる。その一方で、ユーロ圏共同債の導入など一段の経済・財政統合に関する改革工程に関しては踏み込んだ記述がなされておらず、その点において不透明感は拭いがたい。欧州債務問題が本格的な収束に向かうためには、今後も各国が利害対立を乗り越えて一段の経済・財政統合に向けた努力を目に見えた形で進めていくことが望まれる。
テーマ・タグから見つける
テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。