カンボジア経済の現状と今後の展望~ インドシナ半島の新たな投資フロンティアとなるカンボジア ~

2013/03/27 堀江 正人
調査レポート
海外マクロ経済

○カンボジアは、1970~80年代の長期にわたる戦乱で大きな痛手を受けたが、近年、政治経済情勢が安定し、インドシナ半島の新たな投資フロンティアとして注目されつつある。カンボジアの足元の経済成長率は6%を超え、ベトナムやタイを上回る勢いである。また、ここ数年、労働集約型業種を中心に日本企業のカンボジア進出も活発化している。

○カンボジア経済の高成長を牽引してきたのは、サービス業と製造業の拡大であった。サービス業の拡大に貢献したのはアンコールワット遺跡に代表される観光部門であった。また、製造業については、主に米国向けの輸出拠点として急拡大した縫製業が、輸出の8割を稼ぎ出し、成長の原動力となった。

○カンボジアの縫製品輸出が右肩上がりで伸びてきた理由は、まず、中国やタイの1/5、ベトナムの1/2というカンボジアの人件費の安さである。また、カンボジアを含む後発開発途上国からの輸入に対して、先進国側が特恵関税制度(輸入関税を低減もしくは無税)を適用していることも、カンボジア縫製品にとっての大きなアドバンテージとなった。

○カンボジアの一人当たりGDPは、ミャンマーと並んでASEAN域内で最低水準であり、アジアの最貧国のひとつと言ってよい。カンボジアの所得水準の低さの背景として、経済の農業依存度が非常に高いことがあげられる。1975~79年のポル・ポト政権時代に、農業以外の産業がほぼ壊滅状態になった後遺症で、カンボジアの産業発展は周辺諸国よりも著しく遅れている。

○カンボジアでは、米ドルがデファクトの通貨として流通しているため、金融部門の信認の裏付けとなるのは、中央銀行の「最後の貸し手機能」ではなく、公的外貨準備残高である。ただし、足元の外貨準備は、直接投資流入に支えられて増加しており、現時点では特に懸念はない。

○カンボジア経済が今後成長を持続するための最重要課題は、外国からの直接投資導入拡大であるが、それには、電力・道路等のインフラ整備や、教育水準の向上などが必要である。一方、今後、外国からの直接投資誘致競争において、カンボジアの4倍の人口を有するミャンマーが強大なライバルになると予想される。

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